身だしなみはビジネスパーソンの必須マナーである。そして仕事のパフォーマンスを上げるために、健康であることは言うまでもなく重要なこと。その2つを結びつけるキーワードが「オーラルケア」だ。オーラルケアに熱心な堀江貴文氏と歯科医師の小山茂幸氏が語る、歯の健康と体の健康との関係、そして歯の健康とビジネスパフォーマンスの関係とは?

糖尿病や認知症のリスクも高まる

去る10月23日、東京・渋谷のTRUNK HOTELにて「歯と口の健康シンポジウム 2019秋」が開催された。このシンポジウムは、日本歯科医師会がオーラルケアの重要性を広く周知するために定期的に実施しているもの。今回は同会常務理事の小山茂幸氏による講演のほか、堀江貴文氏を特別ゲストに迎え、小山氏との対談などが行われた。

まず、小山氏の講演では、歯周病やう蝕(むし歯)の仕組みや現状についての発表が行われた。近年はう蝕の発生率は低下しているが、重度の歯周病患者は逆に増えているという。また、永久歯が抜ける原因として最も多いのも歯周病で、特に45歳以降はその割合が急増する。歯周病の原因は歯と歯の間や歯と歯ぐきの間(歯周ポケット)に溜まった細菌のかたまり。この細菌が繁殖することでまず歯ぐきが腫れ(歯肉炎)、歯肉炎を放置すると炎症が拡大し、ついには歯の根元の骨を溶かして歯を支えることができなくなってしまう。

日本歯科医師会常務理事、小山茂幸氏の講演の様子。

さらに、歯周病は命を脅かしかねない疾病とも深く関連するという、衝撃的なレポートも報告された。歯周ポケットに溜まった毒素が血中を通じ、全身へ悪影響を及ぼすというのだ。

特に最近注目されているのが糖尿病との関連で、歯周病の人は糖尿病になりやすく、また糖尿病患者は歯周病になりやすいという調査結果もある。逆に、歯周病を治療すれば血糖コントロールも改善するそうだ。ほかにも、心疾患や認知症、誤嚥性肺炎、リウマチなどとの関連性も指摘されており、オーラルケアで病気のリスクを下げられるとの説明がなされた。

小山氏は、「歯周病はむし歯と比べて痛みがあまりなく、発症に気づきにくい。知らないうちにどんどん進行してしまい、気づいたときには手遅れということも多い」と言う。歯周病は10代でも発症するが、罹患率が急増するのが30代、40代のまさに働き盛りの世代。日々の仕事に追われてケアをせず放っておくと、後で泣きをみる羽目になりかねない。「痛くないし特に問題ないから」とおざなりにせず、定期的に歯科健診を受けることの重要性を実感した。

優秀なビジネスパーソンはオーラルケアにも熱心

続いて登壇したのが特別ゲストの堀江貴文氏。じつは堀江氏は、予防医療普及協会という団体のファウンダーとしての顔も持っており、その一環としてオーラルケアにもかなり熱心に取り組んでいる。日ごろから歯間ブラシやデンタルフロスまで用いてのオーラルケアを習慣づけ、さらに3カ月に一度は歯科医に通い、歯のクリーニングやホワイトニングも行っているという。そんな堀江氏が鋭く指摘したのが「口臭問題」だ。

小山氏(左)と対談する堀江貴文氏。

「日本人はもっとオーラルケアに気を配るべき」と堀江氏は言う。小山氏によると、定期的に歯科健診に通う人の割合は、欧米の8~9割に対して日本はわずか2~3割に過ぎない。堀江氏は歯周病がもたらす口臭について触れながら、ビジネスのマナーとして口臭がしないことの重要性を語った。

「口が臭い人は営業成績も悪いはず。少なくとも僕は口が臭い人には近づきたくない。きっとそういう人は多いと思う」(堀江氏)。例えば営業マンなど普段から人と接する機会が多い人なら、相手から「口が臭うからあまりそばに近づきたくない」と思われては仕事にならず、ひいては会社の業績にも影響しかねない。ぜひ自宅でのケアと定期検診を組み合わせたオーラルケアを推進すべきだと熱弁を振るった。

オーラルケアの一環として、定期的な歯科医通いと並行して、自宅での電動歯ブラシの使用は有効な方法の一つだ。実際に堀江氏が試してみたのがパナソニックの音波振動ハブラシ「ドルツ」。「ブラシの毛先が柔らかくて歯周ポケットにすっと入っていくし、手で磨くのに比べて短時間で済む。“時短”はビジネスパーソンにとっても重要だ」と使用感を述べた。

また、小山氏は「オーラルケアを正しく行えば、将来的な医療費の削減にもつながる」と語った。気が付かないうちに歯周病が進行して抜歯や入れ歯などの歯科医療代が高くつく、あるいは歯周病から糖尿病を発症して膨大な医療費がかかるといった、余分な出費は誰もが避けたいところ。これはあくまで可能性の話だが、調査でも明らかになっている以上、対策を行わない理由は見当たらない。

ほかにもシンポジウムでは、歯科衛生士による「ドルツ」を用いてのブラッシング講座やコーナーを設けての個別の歯科相談なども行われ、充実した内容となった。

(左)歯科衛生士の濱田真理子氏によるブラッシング講座。 (右)個別の歯科相談コーナーの様子。
(左)パナソニックの音波振動ハブラシ「ドルツ」シリーズの展示。 (右)ドルツの最新機種「EW-DP53」を手に取り感触を確かめる参加者。

思った以上に、歯の健康は体の健康やビジネスのパフォーマンスに大きな影響を及ぼすことがわかった。いつまでも健康を保ち、いい仕事をしたいと思うなら、歯の健康を守ることは必須といえるだろう。オーラルケアの重要性を実感した一夜だった。

(構成・文/デュウ 撮影/洞澤佐智子(CROSSOVER))