今後の自動車は「CASE」がキーワードになる。Cはコネクティッド(インターネットなどとつながる)、Aは自動運転、Sはシェアリング(カーシェア等)/サービス、EはEVカーのことである。そんな中、コネクティッドサービスを提供するビジネスパーソンたちにスポットを当て、一般ユーザーはそれをどう使えばより快適なカーライフを過ごせるのか? 連載の第6回は実際にコネクティッドカーの背後でどんな人たちがどんな仕事をしているのか、直撃した。
自動通報受信デスクのスーパーバイザーの朝倉さん。

もし、夜、車に衝撃を感じたらどうする?

車に乗っていて、夜中に人里離れた一本道を走っていたとする。

突然、車が揺れて止まった。何か動物にぶつかったのだろうか? いや、何があったかよくはわからない。

まあ、いいやと思ってスタートしようとしたら、エンジンがかからない。いったい、どうすればいい? ロードサービスに電話すればいいかも? でも、どこにかければいいのか?

そもそもここはどこなのか?
オレはどこにいるのだろうか?

街灯はあるけれど、はるか彼方だ。コンビニも近くにはない。後はすべて暗闇。だんだん心細くなってくる……。

そんな時、コネクティッドカーだったら……。しかも、「タフ・つながるクルマの保険」に入っていれば、すぐにスマホに電話がかかってくる。

「今、お客さまの車に衝撃を検知しました。どうかなさいましたか?」

このように、年中無休、24時間、コネクティッドカーの安全を見守っているのが衝撃検知に対応する「タフ・つながるクルマの保険」自動通報受信デスクのスーパーバイザー、朝倉康陽(アサクラ ミチアキ)だ。

今回のインタビューはコネクティッドカーを見守る、ふたりのサービスの達人に話を聞いた。

コミュニケーターの仕事の中身

――朝倉さんは学生時代からコミュニケーター(オペレータ)の仕事をしているんですって?

【朝倉】はい、コールセンターのアルバイトをやったことがありまして。自分に向いている仕事は何だろうなって考えたときに、オペレータが最初に浮かびました。

――オペレータになりたいと思った理由は何ですか?

【朝倉】基本的におしゃべりが好き。話が好きっていうのと、話すこと自体を考えるのが好き。この人にはどういう言葉を使ったらいいのか、どういう言葉なら伝わるのかを考えて話すのが好きなんです。

――よくわかりました。確かに、言葉遣いというか、言葉の選び方、話の仕方がお上手です。さて、自動車保険「タフ・つながるクルマの保険」自動通報受信デスクのオペレータとしてやっている仕事を教えてください。

【朝倉】車載のDCM(Data Communication Module)が検知するとデータがわれわれに飛んで来ます。

「大丈夫ですか? いかがなさいましたか?」とご連絡し、その後のご案内をするのが基本の仕事です。

――「タフ・つながるクルマの保険」自動通報受信デスクが始まったのは2018年。それまでは他の自動車保険のデスクをやっていたのですね?

【朝倉】はい。

――では、従来の自動車保険の場合と、タフ・つながるクルマの保険の場合の対応の違いを教えてください。

【朝倉】タフ・つながるクルマの保険でも基本的にやることは同じです。しかし、さまざまな手配をするまでに掛かるお客さまとのやりとりの時間は短くなりましたし、お客さまにとっては安心度が違うと思います。

――それは?

【朝倉】従来の自動車保険の場合はお客さまから電話をいただいて、それから、さまざまな手配をするわけです。「タフ・つながるクルマの保険」はこちらから電話をします。そこが最大の違いです。

従来の保険でしたら、お客さまにまず、いろいろ聞かなくてはならないんです。「安全な場所に止まっていますか? 当社と契約はありますか? 車のナンバーは? 証券番号は?」、何より肝心なのは、「今いらっしゃる場所の住所を都道府県から教えてください。」

レッカー車を向かわせるにしても、その場所の住所がわからなければ急行できません。

でも、従来の自動車保険の場合は聞きだすことが実に大変なんです。たとえば、レジャーで車に乗って、途中でトラブルに遭った場合、お客さまはまず止まった場所の住所がわからない。

――まあ、そりゃそうですよね。

【朝倉】なので、そうなってくると目で見て、「目標物はありますか?」と訊ねます。でも、初めての場所で、トラブルに会った瞬間に「住所なんてわからないよ……」っていうのが普通のお客さまの反応です。これ、あくまでも従来の自動車保険の例ですよ。

コネクティッドカーでしたら、衝撃を検知したというデータが飛んできた時に、場所がすぐにわかりますから。また、お車を特定できれば、お車のナンバーも保険の証券番号も契約者のお名前も調べることができます。ですから、すぐにレッカー事業者なり、事故受付センターなり、必要に応じて消防へも連絡することができます。

――従来の自動車保険の場合、夜、初めての場所で、自分がいる位置を知るにはどうすればいいんですか?

【朝倉】まずは都道府県を聞きます。それから住所を探り当てるためにお訊ねしていきます。本当に目印のないところでしたら、「近くに自動販売機はありますか?」と聞きます。なぜなら、自販機の正面にはたいてい住所が書いてありますから。

――自販機に住所が書いてあるのですか。それは知らなかった。でも、自販機がない場合はどうするんですか?

【朝倉】ない場合は、どういうルートを通ったかを聞いて、お客さまのいらっしゃる場所を点ではなくて線で探すという感じになります。

「どちらから来て、どちらへ向かっていらっしゃいましたか? 何時間くらい、走られましたか? 時速は何キロぐらいでしたか?」

そうやって、だいたいの見当がついたら、地元の事業者と連携して、やっと場所が絞れる。そのくらい時間をかける必要があります。

――場所以外で、ドライバーがなかなか応答ができないことってありますか? 従来の保険の場合ですけれど。

【朝倉】これまでの自動車保険の場合の対応で言いますと、事故を起こされたばかりのお客さまがご存知ないのが、ご自身のお車のナンバーです。

――えっ、そんなことあるんですか?

【朝倉】結構いらっしゃいます。「覚えてない、たしか、最後は7256だったかな……」、みたいな感じです。事故直後だったら、まず出てこない。車の中に保険証券を積んでいれば証券番号もわかりますし、ナンバーもわかるのでいいんですけれども。それすら、どこに入れたかわからないお客さまも多い。また、高速道路の本線上だったら、車の外に出て、車についているナンバーを見に行くのは危ないという状況があります。

車のナンバーを忘れた場合は、お名前、ご住所、ご自宅の電話番号など、絶対わかるであろう情報を聞き出して、見当をつけて手配を進めていました。

これまではそうやっていたんですけれど、コネクティッドカーであれば、衝撃を検知したというデータが飛んできた時に、表示されるモニター上の情報を確認することで、どういう契約をされているお客さまで、どういうサービスを受けられるかもわかります。

一番大きいのは場所です。いらっしゃる場所がすぐわかっている状態でこちらからご連絡できる。かつ、その情報ごとロードサービスの手配する窓口に転送できる。よって、速く駆けつけることができます。

――革命的ですね。

【朝倉】はい、革命です。ですから、私としては、お客さまにコネクティッドカーとタフ・つながるクルマの保険の利点をわかっていただきたい。そうすれば、さらに安心につながるのかなと思います。

――百点満点の答えですね。

【朝倉】いえいえ(笑)。でも、これまではお客さまからの連絡を待つのが仕事でした。コネクティッドカーだと衝撃を検知して、こちらから連絡ができ、しかも、お客さまがどこにいて、どういう状態なのかもわかっています。まったく対応が違ってきます。

――つまり、これまでの自動車保険はお客さまから連絡が来ない限り、保険会社側は何も把握できなかった。それがコネクティッドカーの衝撃検知のおかげで、お客さまへの対応の幅が広がったと。

なんにもなくても電話はする!?

――コネクティッドカーに乗っていて、タフ・つながるクルマの保険に入っていると、従来の自動車保険より、とにかく処理が速いということになりますか?

【朝倉】はい。そうです。確認事項が少なくてすむわけですから、お客さまの負担感はかなり少ない。

ですから、お客さまから「ありがとう」というふうに言われることが多いですね。「大丈夫、何でもないよ、ありがとう」っていうお言葉で、だいたいお電話は終わるんですけれども。

――何もなくても電話することがあるのですか?

【朝倉】いいえ、衝撃を検知した時にお電話します。衝撃検知の精度は非常に高いんです。

――それは敏感すぎるということですか?

【朝倉】たとえば、車でお店に入ろうとして、縁石に乗ったとか、タイヤをこすったといった普段の運転だったらそこまで気にならないような内容でも衝撃を検知をする場合があります。そして、こちらからご連絡すると、お客さまが認識されてないケースがあるんです。

「お客さまおケガはないでしょうか?」と、ご連絡しますと、「いや、何もないけど」って。逆に不安をあおってしまうといけないので、事情をご説明するんですけれど。

――ということは、衝撃検知にカメラや運転挙動のデータが加われば、敏感過ぎることにはならないわけですね。

【朝倉】そうだと思います。しかし、反応が鈍い装置よりは、敏感に反応する方がよろしいかと思いますので、そこはなんとも言えないです。電話をすると、安心される方も少なくないわけですから。

――朝倉さん、タフ・つながるクルマの保険とコネクティッドサービスっていうのは、どういう商品だと思いました?

【朝倉】この仕事を通して、お車自体に備わっている機能と、その保険のサービスというのが融合しているので、先ほどのお話に出ましたけれども、お客さまご自身がそれほど手をわずらわせなくてもすむ。事故を起こされたら必ず不安ですので、ご安心していただけることに、すごく貢献している仕事だと思います。

――この保険に入ると事故は減るのですか?

【朝倉】実際に、救急車を呼ぶような事故で連絡したことはありません。また、従来の自動車保険にご加入のお客さまと比較して、事故の発生頻度が25%程度抑えられているというデータもあり、事故の防止に役立っているのではと感じています。そして、この保険だと日ごろの運転挙動に点数が付きます。安全運転だと点数がよくなって保険料が下がる。ですから、事故は減っていく。

でも、これは私たちがやる事故対応の仕事というより、もうひとりのコミュニケーター、佐々木真由実さんの仕事です。

彼女は「タフ・つながるクルマの保険」の商品内容に対する問い合わせに答えています。

あおり運転され急加速したらスコアは下がるのか?

佐々木真由実さんは「タフ・つながるクルマの保険」のお問い合わせデスクで、契約者、もしくはご契約を検討されているお客さまからの商品に関する問い合わせに答えている。同保険のシステムや、安全運転スコア、保険料などに関して答えるのが彼女たちの仕事だ。むろん、同保険を扱う代理店でも同じ内容の質問に答えるのだが、彼女たちにかかってくる電話も少なくない。
「タフ・つながるクルマの保険」お問い合わせデスク、佐々木さん。

【佐々木】コミュニケーターは2005年からやっています。最初は損害保険の代理店様向けのシステムヘルプデスクでした。自動車保険だけでなく、火災や積立保険など、さまざまな保険商品の申込書を作ったりですとか、契約入力などをする代理店システムの操作をご案内するデスクにずっといました。

――今はお客さまからの「タフ・つながるクルマの保険」の問い合わせに答える仕事ですね?

【佐々木】そうです。一般のお客さまとお話しているので、なるべくゆっくり話すよう心がけています。

代理店様向けのヘルプデスクでは、先方は、早く答えが欲しいところもあるので、話し方もハキハキとスピード感が大事でした。急いでいた方が多かったので、少し早めの話し方でお話をしていました。今は一般のお客さまとお話をさせていただいているので、なるべくわかりやすくゆっくり話すようにしています。

――コネクティッドサービス自体を勉強されたんですね?

【佐々木】そうです。研修で教えていただきました。自動車とつながるシステムがあることをよく知らなかったので、へえ、こんなことまでできるんだとびっくりしました。

――みんなそうですよ。いちばん驚いたのはどこですか?

【佐々木】カーナビを遠隔操作で設定できるなんて知りませんでした。また、トヨタ・コネクティッドのオペレーターの方が車の行き先ですとか、いろいろな場所を案内してくれることにも驚きました。コネクティッドカーのサービスはすごいなって。そんなサービスは一部の車だけのことだと思っていたのですが、最近はプリウスやカローラまで標準装備されるようになり、当たり前のようになっているということに、一番びっくりしました。

――では、佐々木さんのところに問い合わせがあるのは、やはり保険に関することですか?

【佐々木】はい。お問い合わせいただくのは、商品全般ですが、大半は安全運転スコアによって保険料の割引になることについてです。「どういう部分が判定の基準になっているのか」というのを気にされている方が多いです。基本的には急加速、急減速、速度超過をすると、1回で決まるものではありませんが、安全運転スコアは減点になる傾向にはなります。

先日、「あおり運転に遭って、自分が急加速した時はどうなるのか? 判定の基準になってしまうのか?」という、お問い合わせいただきました。

――どう答えたのですか?

【佐々木】今はまだ、あおり運転かどうかを検知できないので、急加速に該当してしまいます。ただし、安全運転スコアは1か月間の走行の総合的な評価によるので、その後の安全運転を心がけていただければスコアは良くなりますとご説明しました。

――どういう方が問い合わせをしてくるのですか? そして、問い合わせの内容は?

【佐々木】契約されている方が大半です。その方たちはご自分の安全運転スコアについて聞いてくる方が多いです。

ご契約はまだで、この保険に関心があるお客さまは「安全運転だとどれくらい保険料が安くなるのか?」に興味を持たれていらっしゃいます。

――安全運転だと、どれくらい安くなるのですか?

【佐々木】この保険は、走行距離ですとか、運転特性に応じて保険料が変わってくるので、一概には言えませんが、安全運転をしていれば、従来の自動車保険よりも1年間に1万円くらいは安くなる可能性はあります。

ですが、車種ですとか、補償の内容によって違いますから、詳しくは代理店さんにご確認していただいた方がいいです。

――自分が思っていたよりも点数が悪かった人からも電話がかかってきたりしますか?

【佐々木】そうですね。

――その場合は、どういうふうに答えるのですか?

【佐々木】その場合、一緒にドライブレポートを見ていただいて、どの地点で急加速ですとか、急減速、速度超過があったということを確認していただくことで、そのような点数になったとご説明します。

――1カ月分のドライブレポートを見るんですか?

【佐々木】運転するごとに出てくるドライブレポート、そして、一カ月の走行で算出されるマンスリーレポートがあるのですが、マンスリーレポートの点数で、運転特性の割引が変わるので、一回の運転というよりは、一カ月通じて安全運転をしていただくことで点数がよくなるので、今後の安全運転をお願いしますというご案内をさせていただいています。

具体的にはお客さまには過去のドライブレポートを見ていただいて、何月何日は何点ですね、何月何日は何点ですねっていうような。実際によかった運転のところを見ていただいて、今回はこの点数だったけれども、普段これだけよい得点をとられている方なので、マンスリーの、一カ月の結果としてはよくなると思いますというようにご説明します。

――つまり、継続的に安全運転をすることが大事?

【佐々木】事故が減るのは継続的に安全運転をされるからだと思います。

あっ、もうひとつ、これはあまりないケースですけれど、一般道の上に高速道路がある場所で、高速道路で走っていたのに、一般道だとシステムが誤認して「速度超過」と判定されたことがありました。ただ、その場合はご連絡をいただいて解決しました。

――佐々木さんのところに電話してくる方は保険料が安くなることと安全運転を続けることのどちらを気にしていますか?

【佐々木】安全運転じゃないでしょうか? やはり、みなさん、事故がいちばん嫌なのだと思います。ですから、安全運転を続けてくださいというと、「そうだね。その通りだね」と。こういう保険に入ると、普段から安全運転を意識することになるので、それがいちばんいいことじゃないでしょうか。また、安全運転を意識することが事故を防ぐことに繋がると思います。

(野地秩嘉=文 大沢尚芳=撮影)