近年、うつ病や過労死、パワハラなど、会社側の“安全配慮義務違反”を問う判例が増加し、新たな労務リスクとして経営そのものを揺るがしかねない事態を招いている。それに対して、経営者はどう備えたらいいのか――。まさにそんな問いに答えるセミナー「経営者必見 労務リスク対策の最前線!解説セミナー」が、人事評価制度の構築や運用支援を行うあしたのチームによって6月13日に開催された。その中で同社代表の髙橋恭介氏は、「人事評価制度がもたらす好循環と、これからの企業防衛のあり方」とのテーマで講演を行った。人事評価制度がいかに企業防衛とつながるのか。PRESIDENTオンラインでは、同講演から経営者が押さえておきたいポイントをまとめたホワイトペーパーを作成した(当ページの下部から無料でダウンロード可能)。ここではホワイトペーパー未収録の内容を中心に、その一部を紹介する。
髙橋 恭介(たかはし・きょうすけ)
株式会社あしたのチーム 代表取締役
1998年、東洋大学経営学部を卒業。興銀リースを経て、2002年に創業間もないベンチャー企業であったプリモ・ジャパンに入社し、副社長として事業拡大を牽引すると同時に、人事にも深く関わる。08年、株式会社あしたのチームを設立、代表取締役に就任。2500社を超える中小・ベンチャー企業に対して報酬連動型人財育成プログラムを提供。給与コンサルタントとして数々のセミナーの講師も務める。

営業利益率の伸びが3倍違い、離職の可能性も低い

冒頭、髙橋氏は次のように問題を提起した。

「2000年以降、業務での強い心理的負荷に起因する精神障害の労災請求件数は年々増え続け、2017年度には過去最高となる1732件に及びました。うつ病、過労自殺、いじめといった案件の訴訟では、数億円の多額の賠償金の支払いを命ずる判例も出てきています。こうした労務リスクは、いまやどの職場にとっても人ごとではない問題ですが、何らかの形で対策が取られている会社はどれだけあるでしょうか」

2019年から働き方改革関連法が順次施行され、企業に求められる備えのレベルも上がっていると髙橋氏は指摘。対策としては、ことが起きた際の対処方法を準備しておく、予防手段を講じるなどが考えられる。しかし、より根本的に「従業員の精神的負荷を減らす」ことが欠かせない。そこで髙橋氏が重要な指標として挙げたのが「エンゲージメント」、つまり従業員の会社への自発的な貢献意欲だ。

「オランダとスペインの心理学者による共同研究では、エンゲージメントの高い従業員は、心身の健康状態が良い傾向にあることが明らかになっています。また、エンゲージメントが高水準を維持している企業は低い企業に比べ営業利益率の伸びが3倍になり、離職の可能性が低いといった報告もある。海外では、エンゲージメントの考え方が、リスク防衛という“守り”だけでなく、企業の業績を伸ばす“攻め”にも活かされるようになっています」

●エンゲージメントがもたらす効果

出所:タワーズワトソン(現ウイリス・タワーズワトソン)プレスリリース(2012年7月25日)

しかし現在の日本は、エンゲージメント後進国。米国ギャラップ社の調査によると、仕事に「非常に意欲的」な社員の割合はわずか6%で、調査対象国139カ国中132位だという。「従業員満足度に近いものだと考えられがちだが、実は似て非なるもの」だというエンゲージメントを、企業はどう高めていけばよいのだろうか。

●世界各国のエンゲージメントスコア

出所:米ギャラップ社調査(2017年発表)

その鍵を握っているものこそ、人事評価制度だ。適切な目標設定に基づき、成果が正当に評価されるフェアな人事評価制度を構築・運用していくことによって、エンゲージメントの主な構成要素である、①企業の方向性に対する理解、②帰属意識、③行動意欲 を上げていけるという。

「海外での労務リスク対策の方向性は、問題発生後の対策から、事前の予防へとシフトしつつある。その流れのなかで、社員のモチベーションを高め、心身の健康維持と生産性向上につなげる『ポジティブ・メンタルヘルス』が注目を集めています」と髙橋氏は言う。

では、具体的に社員一人ひとりの「エンゲージメント」をいかにして高めるのか。 ホワイトペーパーでは、その方法論、従来の人事考課との違いを詳しく紹介する。掲載内容は、「優秀な社員をより正当に評価したい」と考える経営者にとっても、大いに参考になるはずだ。

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