急ピッチで進む再開発
「100年に一度」の大改造で、長らく工事が続いている渋谷では新しい街が形を見せ始めた。昨年の渋谷ストリームのオープンに続き、渋谷駅直結・直上の三つのビルから成る「渋谷スクランブルスクエア」のうち、地上47階建ての東棟が今年11月に開業。再開発は2027年まで続くが、オフィス不足から他地区に流出していたIT系企業の再結集の兆しもあり、ビジネスパーソンでにぎわう「大人が遊べる街」への脱皮が期待されている。
東京駅周辺では、これまでも丸ビルを皮切りに丸の内〜大手町エリアで超高層ビルの建て替え事業が続いてきたが、ここへきて東側の八重洲地区でも開発計画が目白押しだ。大阪のあべのハルカスを抜いて日本一の高さとなるビル(2027年度完成予定)をはじめ、超高層ビルが次々に建設される。地下には巨大バスターミナルも計画され、湾岸エリアと東京駅間をBRT(バス高速輸送システム)が結ぶ予定だ。
新たな国際交流拠点の誕生へ
品川エリアも目が離せない。山手線では約50年ぶりの新駅となる「高輪ゲートウェイ駅」が、来年暫定的にだが開業する。ここではJR品川車両基地の跡地を利用して都心部では最大級の再開発プロジェクトが計画されており、新駅はその中核という位置づけだ。
再開発の第一期分の対象となる面積は約9.5ヘクタール。2024年度には超高層ビル4棟、大型低層ビル1棟の完成を目指しているが、新駅から隣の品川駅までは1km足らずという近さ。品川駅から羽田へのアクセスのよさや、将来リニアの始発駅となることを考えれば、副都心的な役割を担う国際拠点が形成される公算がきわめて大きいと考えられている。
また、虎ノ門エリアでも2023年度までに3棟の超高層ビルが建設される予定。湾岸エリアは、タワーマンションなどを次々と供給してかつての工業地帯から劇的な変化を遂げ、人口を増加させてきたが、現在でも豊洲や有明を中心に商業施設やオフィス、ホテル、マンションなどの建設も含めて再開発が進行中だ。
求められるトータルな再開発
再開発の進行はとかく2020年を頂点とするものとして捉えられがちだが、こうして東京の状況を概観してみれば、2020年以降も続くのはもちろん、より加速度や規模を増すことがわかるだろう。言うまでもないことだが、この背景には、日本の成長を後押しするために国が定めた国家戦略特区と、それを積極的に活用して東京都がとってきた都市再生推進策がある。国際競争力の強化を目指して、人材や企業が活躍できるビジネスや生活環境の整備を進めようというものだ。
世界の都市間の競争を勝ち抜き、国際都市として生き抜くには、いかに人材を集積するかが鍵を握る。そのためにも、単にオフィスの床面積を増やすのではなく、働きやすさや暮らしやすさの向上をはかり、魅力的な街を作ることが重要になる。ここで挙げたエリアでは、そうしたトータルな形での再開発をはかっている。オフィス、ホテル、商業施設、住居などの各要素をバランスよく配し、いかに有機的につなげていくかが、成長を支えるエリア創出の鍵を握ることになるだろう。