ビジネスのデジタル化が進み、異業種が次々と競合事業者として参入、既存のビジネスモデルを「ディスラプション」する事例が数多くの業界で見られるようになった。流通業やFinTech企業が相次いで参入し、厳しい競争に晒されているのが金融業界だ。沖縄県那覇市に本店を置く琉球銀行も、近年、「コンビニATMやデジタルチャネルの台頭による、来店客数の減少や営業店事務スタッフの業務負荷の増大」という課題に直面していた。今回、PRESIDENTオンラインでは同行にインタビューを実施。どのように営業店チャネルの価値を「再定義」し、デジタル変革を推進したのか、同行の取り組みをまとめたホワイトペーパーを作成した(当ページより、無料ダウンロード可能)。ここでは、未収録の内容を含め、その一部を紹介する。
営業店改革に取り組む琉球銀行事業統括部のメンバー。写真左から、松原弘樹調査役、平安名育子調査役、平良吉彦部長、上江洲由紀子主任。

「営業店」の再定義を阻む、システムの課題

「金融機関の経営環境は厳しさを増しており、“地域から親しまれ、信頼され、地域社会の発展に寄与する銀行”という経営理念を掲げる当行も、グループ全体で生き残りを模索している最中です」──。琉球銀行の平良吉彦氏(事務統括部 部長)はこのように語る。

平良吉彦
琉球銀行 事務統括部 部長

また、営業店チャネルの現状について、同行の松原弘樹氏(事務統括部 事務企画課 調査役)は、「デジタルチャネルの台頭による来店客数の減少」に加え、「営業店が事務サービス提供の場になっており、本来の期待されるサービスの提供が難しい」「複雑かつ属人化した事務により行員の負担増加」といった課題があると述べた。

こうした課題を解決するには営業店の業務プロセスを改善し、人的サービスを提供できる「強み」を発揮できるよう営業店の価値を再構築していく必要があったが、業務プロセスのデジタル化を進める上で、システム面では次のような課題を抱えていた。

 

(1)デバイスや環境の進化に合わせ、そのつどサービス・ソリューション導入に大掛かりな新規開発が必要
(2)勘定系システムなどレガシーシステムとの連携が密結合で変更が難しい
(3)業務の見直しからシステム開発、改修に至るまで大部分を外部に依存

柔軟性、APIによる連携性や、運用内製化が決め手

松原弘樹
琉球銀行 事務統括部 事務企画課 調査役

同行では、2018年6月、「次世代営業店構築プロジェクト」を立ち上げた。実現したかったのは“誰でもできる事務処理”だ。「複雑で、属人的な事務をルール化し、自動化していくとともに、直感的な操作で事務を進めるようにしたかった」と松原氏は説明する。

もう一つのポイントは、「システム基盤の改修を内製化できる」ことだ。「経営にスピードが求められる中で、必要な機能の追加、施策の試行錯誤を繰り返すためには、なるべく、レガシーの基幹系システムに手を入れることなく、軽量かつ柔軟で連携性の高いシステムにしたかった」と平良氏は話す。

新たなシステム基盤の選定に求められた要件は次のようなポイントだ。

(1)時代に合わせたサービスやソリューションの柔軟な導入
(2)業務単位でAPI化を進め、連携性を確保し、将来的な対面/非対面サービスへの拡張性を担保
(3)システム保守、運用の内製化領域の拡大

複数のソリューションを比較していく中で、これまで基幹系システムを担ってきたIBMの実績と、新システムとの親和性が高い点を総合的に検討し、IBMの業務自動化ソリューションをベースにした、次世代営業店システム(FTBシステム)の開発に至った。

事務処理時間50%削減、行員の意識改革にも期待

「次世代営業店構築プロジェクト」は2019年10月に正式リリースを予定している。営業店業務にタブレットを積極活用し、窓口業務における「帳票レス」「記入レス」「印鑑レス」、そして管理職による「検証レス」が実現され、現行の事務処理時間が50%削減されることが期待される。

さらに、これまでの紙を中心とした銀行業務から、データを活用することで「アナログな=人間味あふれる」金融サービスを提供できるように変革したいと松原氏は述べる。そして、「地域と近い特性を生かし、お客様との密なコミュニケーションを図り、ニーズに応える金融サービスやアドバイスが行える」地方銀行に求められる期待に応えていきたいとのことだ。では、同行では実際にどのように営業店改革を進めていったのか。取り組みの中身を紐といてみたい――。

-- ホワイトペーパーの配布は終了しました --