今、採用担当者の負担が増加している――。売り手市場の中、採用チャネルは多様化。応募者へのよりきめ細かい対応なども求められ、業務量が増えているのだ。通年採用や人材多様化への要請も高まる中、自社が“欲しい人材”を確保するために、経営者や人事担当者が理解しておくべきことは――。企業の人材マネジメントや労使関係を専門とする学習院大学の守島基博教授に聞いた。
守島基博(もりしま・もとひろ)
学習院大学 経済学部 経営学科 教授・副学長
80年慶應義塾大学文学部社会学専攻卒業。86年米国イリノイ大学産業労使関係研究所博士課程修了。カナダのサイモン・フレーザー大学経営学部助教授、慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授などを経て、2001年一橋大学大学院商学研究科教授。2017年より現職。

人事部門の最大の使命とは何か――

「バブル経済が崩壊してしばらくの間、企業で最も不足していたリソースは“カネ”でした。しかし、近年はそれが“ヒト”や“人材”に変わっている。現在、多くの企業が直面する最大の問題は、“人材不足”です」

学習院大学の守島基博教授はこう語る。ただし、この“人材不足”は単なる“人手不足”とは似て非なるものだという。

「業務をこなせるレベルの人を集めれば、“人手不足”は解消できるかもしれません。しかし企業が成長していくには、経営ビジョンや経営戦略を具現化する力を持った“人材”が欠かせない。そうした人をしっかり確保する『戦略人事』を行えるか否かが、企業の存亡にかかわる時代になっているのです」

戦略人事の実践により、競争力の源泉となる“人材”を獲得、育成し、経営をヒトの面からサポートする。それこそが人事部門の最大の使命だ。しかし、企業の採用活動の現状に目を向ければ、実現は容易でないこともわかる。

「まず日本企業には、人事部長はいても採用専門の司令塔は不在というケースが珍しくありません。特に中途採用に関しては、正式な採用プロセスも定まっていない企業が多く、求める人材要件の決定、面接、選定、さらに採用後の定着活動までほぼ現場任せのことも多い。これでは戦略人事の実践は難しいでしょう」

“人事部門はビジネスを知らない”と現場に思われがちなのも問題だ。採用を戦略的に進めようとはするものの、現場とのすり合わせに苦慮するケースも少なくない。また、通年採用の実施や人材獲得競争の激化などによって仕事そのものは増え続けている。なかでも、Excelでの応募者管理や応募者・エージェントとの日程調整などのオペレーション業務(非コア業務)の効率化や削減は、やはり人事部門の大きな課題である。

「優れた人材を採用するには、目の前の採用活動を進める以外にも、これまでの採用の効果を分析する、労働市場の状況を把握するなど、取り組むべきことがたくさんあります。しかし、課題解決に直接つながらない作業的な非コア業務に時間を割かれていては、そうした本来取り組むべき仕事に手が回りません」

そうした中で、経営者や人事担当者がまず確認すべきことは何だろうか。まとめると大きく以下の4つだ。

(1)労働市場の変化をしっかり理解できているか
(2)人事がオペレーション業務に忙殺されていないか
(3)現場任せの“穴埋め採用”になっていないか
(4)勘と経験だけに頼る採用になっていないか

では、これらの課題とどう向き合えばいいのか。今回、守島教授へさらにインタビューを行い、そのポイントをまとめた無料の「ホワイトペーパー」を作成した。経営者や人事担当者が現状を整理し、次に進むための情報が満載。一読の価値ありだ。

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