築き上げてきた資産を子どもたちに少しでも満足する形で残したい――そう考える人は多いだろう。2015年1月に相続税制が改正されて以来、相続対策という言葉も馴染みのある言葉になってきた。しかし、様々な相続対策の中から本当に正しい手法を選択できているだろうか。不動産を活用した相続対策の有効性を提案しているパートナーズの吉村拓社長に聞いた。

節税効果抜群の不動産活用、ただし「注意点」も

――相続税対策としての不動産活用を検討する方が増えているそうですね。現金で相続するよりも不動産で相続したほうが「お得」なのでしょうか。

【吉村】結論から言うとその通りです。近年「節税対策」としてやはり“節税対策”として不動産という形での相続に関心を持つ人が増えています。ただ、節税にばかり頭が行ってしまい、具体的にどの程度の節税になるのか、ほかにどんなメリットがあるのか、またどのようなリスクがあるのかまで理解されている方は多くはないようです。

節税対策として不動産を用いるメリットが大きいのは事実です。現金を相続した場合は相続額の100%が課税対象となります。例えば1億円の現金を相続すれば、1億円が課税価格となります。しかし、現金を不動産に替えると、土地は路線価、建物は固定資産税評価額で評価されるため、相続税評価額は下がります。賃貸住宅ならさらに減額があり、最終的に購入金額の約1/4程度にまで評価額を下げられます(※詳細は物件ごとに異なります)。

品川区のワンルームマンションでの相続税圧縮の事例

[物件概要]
売買価格:2390万円
立地:JR大崎駅 徒歩5分

[不動産評価額]
土地:6,045,954円……(1)
建物:2,184,900円……(2)

[賃貸不動産の相続税評価額]
土地の借地権割合を60%、土地と建物の借家権割合を30%、賃貸割合を100%として計算。
土地:(1)×{1-(60%×30%)×100%)}=4,957,682円……(3)
建物:(2)×{1-(30%)×100%)}=1,529,430円……(4)
合計:(3)+(4)=6,487,112円

[購入価格に対する圧縮効果]
6,487,112円÷23,900,000円=27.14%  およそ1/4に圧縮!

注)賃貸不動産の相続税評価額の土地の借地権割合 60%と、賃貸割合100%は条件によって変動します。
注)土地と建物の借家権割合30%は年度と都道府県で異なります。 平成30年度の東京都は記載のとおり30%です。

節税面のほかにも、実物資産である不動産は現金に比べインフレに強い。また、賃貸物件として貸出を行う場合、継続的な賃料収入が見込める点も、使えばなくなる現金にはない大きな魅力でしょう。人生100年時代を迎え、社会保障制度の先行きも不透明、国もインフレ政策を取る中で多様なメリットが期待できるのは収益物件の大きな強みです。ただ、それには「唯一にして最大の条件」があることを忘れてはいけません。

――どのような「条件」でしょうか。

【吉村】当然のことですが、“入居者の方がいて、賃料が入る”ということです。この基本が案外なおざりにされているように思います。

――相続税の節税効果ばかりに着目してはいけない……。

【吉村】これも当然ですが、不動産を購入するには相応の資金が必要です。投資に見合うリターンがなければ、結果として資産は目減りしてしまいます。家賃が入らず、管理や修繕のコストばかりがかかり、売値もつかない……。そんな“負の遺産”を残されても、お子さんの側は「相続税を払っても現金でもらった方がよかった」ということになるでしょう。現実問題として、日本は8年連続で人口減少が進んでおり、空き家の数も年々増加しています。

グラフは野村総合研究所が発表した総住宅数・空き家数・空き家率の実績と予測結果。実績は総務省「住宅・土地統計調査」より。予測値は野村総合研究所。

確かに不動産投資による節税効果は明確なので、その点に関心が向くのはわかります。しかし、相続において本当に大事なのは、単に節税をすることではなく、“想い”のこもった資産を子どもたちへ承継すること。その意識が薄いと、失敗してしまいます。

吉村 拓(よしむら・たく)
株式会社パートナーズ 代表取締役

1980年千葉県生まれ。2004年に駒澤大学を卒業。投資用不動産の開発会社勤務を経て、米国最大手の外資系金融機関へ。リスクマネジメントを担当する部門で経験を積み、投資用不動産専門仲介業者へ入社。最前線でトップセールスとして活躍。東日本大震災の際、被災地にてボランティア活動を体験する中で、同年9月、パートナーズを設立。著書に『不動産投資の「勝ち方」が1時間でわかる本』。

人気エリアのワンルームマンションは需要増が見込める!

――相続する価値のある不動産にはどのような要素が必要でしょうか。

【吉村】先ほど人口減少、空き家の増加という話をしました。しかし、実はこれらの数字は全国平均でとらえても、個々の不動産投資においてはあまり意味がありません。人口が減っても、賃貸住宅に住む人がいなくなるわけではないからです。

つまり最も重要なのは「立地」。東京はこの人口減の中、転入超過で人が増え続け、単身者世帯も増加しています。さらに世界の都市別GDPで1位を獲得するなどビジネスも堅調で、大学の都心回帰も進んでいます。

供給の面から見ても、都心の人気エリアは土地不足のため競合が生まれにくい。当社では主に都心人気エリアのワンルームマンションを扱っていますが、特に23区内のワンルームマンションは規制も加わって増えにくい状態です。

そして何より、賃貸需要が旺盛な都心人気エリアの賃料は景気に大きく左右されません。土地神話が崩壊したり、サブプライム問題が起こったときなど、株や不動産価格そのものは暴落しましたが、家賃はおよそ一定の水準を保ったままでした。景気変動による乱高下の心配が少ない点は、都心人気エリアの不動産が持つ大きな利点です。

だから当社では、お客様に提供する物件について「都心9区(※)、駅徒歩5分圏内」という基準を定めています。そうした希少物件を仕入れるため、不動産会社様や地主様とのネットワークなどを通じた情報収集にも力を注いでいます。実際、未公開物件を中心に毎月約1000件、年間で1万件以上の情報を収集。その中から、厳選した物件を自社で買い取り、お客様へ販売しています。

(※)千代田、中央、港、渋谷、新宿、目黒、品川、文京、世田谷の9区。都心9区に該当しないエリアは駅徒歩1〜3分圏内の物件または特定エリアの物件。

――不動産を活用した相続で成功する人と失敗する人の違いはどんなところにありますか。

【吉村】“賃貸経営”といわれるとおり、賃貸物件への投資をビジネスととらえることだと思います。不労所得を得るという発想ではなく、経営的な視点を持つ。これがあるか、ないかで大きな差が出ます。

例えば、市場を分析し、将来を見据え、得られるリターンを考えながら、数ある選択肢から最善のものを選ぶ。また、管理会社の目利きができるか、物件を購入する企業の態勢や健全性をどう評価するかといったことも挙げられるでしょう。実際、当社のお客様でもビジネス感覚の優れた方は高い成果を出されていることが多いですね。

想いを伝え、資産を残す笑顔の相続を後押し

――相続対策として不動産投資を考える読者にメッセージをお願いします。

【吉村】不動産投資は、相続対策の一つの手段です。まずは、本当にそれが必要なのかどうか。その上で賃貸経営に取り組まれる決心をされた方には、ぜひ合理的な判断をして成功してほしい。こと相続に関しては、より確実な選択をしていただくことが大切なのではないかと考えています。

当社には不動産コンサルティングマスター、賃貸不動産経営管理士、相続診断士など、専門的な知識でお客様の確かな判断を支援するスタッフが数多く在籍しています。賃貸経営についてはもちろん、資金計画のコンサルティングや適切な金融機関の紹介なども丁寧にサポート、相続全般にかかわる助言が可能です。

「我が子のために、将来の備えとなる安定収入の仕組みをつくりたい」という親御さんの想いまでを伝え、しっかりと資産を残せる笑顔の相続を後押ししたい。パートナーズという社名のとおり、お子さんの世代まで続くパートナーとしてお客様を支えていきますので、お気軽にご相談いただければと思います。