誰一人取り残さない」の理念のもと、国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」。2016年から2030年を期間とするこの目標の背景にあるのは、前身といえる「ミレニアム開発目標(MDGs)」の成果だ。
開発途上国の貧困削減を掲げたMDGsが採択されたのが2000年。以降、目標達成に向けた取り組みは一定の成果を上げた。国連の「MDGs報告2015」によれば、開発途上国で極度の貧困に暮らす(1日1ドル25セント未満で暮らす)人々の割合は、1990年の47%から14%に減少し、初等教育就学率も2000年の83%から91%に改善されている。それを受け、先進国も対象としながら、気候変動などの課題を盛り込んだのがSDGsなのである。
そもそも“持続可能な開発”とは何を意味するのか。国連は、これを「将来の世代がそのニーズを満たせる能力を損なうことなしに、現在のニーズを満たす開発」と定義している。子や孫の世代に迷惑をかけない範囲で自分たちの欲求を満たすといったところだろうか。
日本の課題解決力が途上国で生かされている
SDGsに法的拘束力はない。目標達成を支えるのは、各国独自の政策や取り組みだ。そこで日本政府も、2016年に「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」を立ち上げ、多面的に活動を進めている。
例えば、「ジャパンSDGsアワード」はその一つ。SDGs達成に資する優れた取り組みを公募し、表彰する同アワードは、第1回の結果が昨年12月に発表されており、全国で12の企業、団体などが受賞している。それぞれの活動内容は、未利用森林資源の再エネ活用、被災地における障がい者の就労向上、市民中心の持続可能な開発のための教育の推進など多様だ。
一方、日本の政府開発援助(ODA)の実施機関である国際協力機構(JICA)も、SDGsの達成に貢献している。
現在、途上国では発展に伴い、例えば公害や防災関連などさまざまな課題が生まれているが、これらの多くはかつて日本自身が直面した課題にほかならない。そこで、「中小企業海外展開支援事業」という形で全国の中小企業が持つ課題解決に役立つ製品や技術を海外に届け、Win-Winの関係を構築しようとしているのだ。すでにトラック物流の効率化や工場における排水浄化など成果が出始めている。またJICAの事業以外でも、自治体や企業が海外支援ビジネスを展開している例は存在する。
国連で採択されたSDGsというと、自分とは直接関係ないようにも感じるが、その17の目標を見ればわかるとおり、いずれも日々の暮らしや仕事とつながっている。17番目は「パートナーシップで目標を達成しよう」だ。人ごとにせず、自分がパートナーの一員になるためにできることは何か。一度、考えてみることが大切だろう。あなたも主役の一人なのである。