(※)リクルートの旅行予約サービス『じゃらんnet』に参画している宿泊施設の事業主向けに先行して提供開始。順次対応業界を拡大する予定。
突発的な資金ニーズを満たすことでお客様が“本業に集中できる環境”を提供したい
──リクルートといえば、人材の採用やホテル・旅館、飲食店、不動産などのマッチング事業が思い浮かびます。今回、なぜ金融事業を始めたのでしょうか。
【小川】現在リクルートは、国内グループ全体で年間約30万社の企業と取引しており、その多くはいわゆるスモールビジネスを展開されている事業者の皆様です。人手は足りないが、採用する時間がなかなか取れない。日々の間接業務も忙しい。そして、相談する相手もいない──。そうした方たちが本業に集中し、しっかりと成長できる環境をつくることは、もともと私たちの役割だと考えていました。
企業規模にかかわらず、誰もがやりたいビジネスにチャレンジできるフェアな社会。そんな社会を実現するために、これまでも採用や集客など多様なサービスを展開してきました。この方向性をさらに一歩進めて、あらゆるビジネスと切っても切れないファイナンス面でもお手伝いできれば、もっとたくさんの方々が自分のやりたい仕事にチャレンジしていける。そう考えて始めたのが今回の新サービスです。
──金融事業への参入を目指したというより、これまでリクルートグループが持っていなかった機能を新たに装備したということですね。
【小川】はい。融資自体はあくまでお客様の利便性を高める手段です。ご存知のとおり最近は、フィンテックという形で、さまざまなデータとファイナンスが融合しています。私たちの手元にもこれまで蓄積してきた、お客様のさまざまなデータがあります。これらのデータを基に与信を行い、素早い融資ができれば、資金を必要としているお客様がもっともっとさまざまなチャレンジができるようになる。データとテクノロジーを金融にうまくつなげて、ビジネスの現場で頑張っている皆様、経営をされている皆様をサポートしていこうと考えたのです。
──中小企業、小規模事業者の資金ニーズについては、サービス開始前からある程度把握していたのでしょうか。
【小川】例えば、日本貸金業協会の調査結果(資金需要者等の借入れに対する意識や行動に関する調査 平成28年)は参考になりました。それによれば、借入申し込みをした事業者のうち、3割以上は希望どおりの融資を受けられていませんでした。では、希望どおりの融資が受けられなかったことでどんな影響があったか。そうした問いに対して、3割近くの事業者が「事業を拡大することができなかった(事業を縮小した)」と答えているのです。
さらに私たちは独自に「小口スピード融資」に関するニーズについても調査を行いました。そこで、成長意欲が高い企業ほど明らかに「小口スピード融資」のニーズが高かったのです。この結果を受け、小口スピード融資によって、「自分たちのサービスをもっとたくさんの方々に使ってほしい」と成長を望む企業に、フェアなチャンスを提供できる可能性があると思いました。同時に、まさにリクルートグループが取り組むべき事業だと思いました。
──新たなサービスを展開する中で、中小企業や小規模事業者が抱える悩みや課題について、気づいたこと、再認識したことなどはありますか。
【小川】一つには、思っていた以上に“突発的な資金ニーズ”というものが存在することに気づかされました。例えば旅館であれば、ボイラーが故障した、台風で大口の予約がキャンセルになった……。金融機関から借り入れをするほどではないものの、すぐに手当をしたい、当座の運営資金を確保したいといったケースです。業種にもよりますが、ビジネスには一般に繁忙期と閑散期があり、繁忙期にしっかり稼ぎ、その蓄えで閑散期を送るというサイクルができています。その中で、少額ではあってもイレギュラーな経費が発生すると、経営に相応の影響が出るわけです。
一方で、「もう少しお金があれば、お客様の満足度を上げられる」といったニーズも見られます。ある宿泊施設からは、当社の「パートナーズローン」を使って、送迎用のマイクロバスを購入したいというお話がありました。必要な場面での素早い投資は、お泊りいただいたお客様の満足度を高めることにつながります。昨年のサービス開始以来、多くのお申し込みがあり、中には感謝のお手紙などをいただくこともありました。
──「パートナーズローン」の具体的な特徴を聞かせてください。
【小川】最大の特徴は、やはりオンラインで手続きが完結すること。最短でお申込みいただいた当日に入金することが可能です。リクルートグループが持つトランザクションデータ(商取引データ)を活用し、独自の審査モデルを構築することによってスピーディーな融資を実現しています。お話ししたとおり、私たちがお応えしたいのは、突発的な経費であったり、チャンスを逃さないためにすぐに必要なお金のニーズですから、迅速さと手続きの簡便さには徹底してこだわりました。
また、当社としても小口の融資をビジネスとして成立させるにはITを利用したコストダウンが必須でした。融資担当者が直接お客様のもとに出向き、状況をお聞きして、審査の上で融資を決定するというのも当然一つのやり方です。しかし、今回私たちが想定しているのは、いわばそうした既存の枠組みにあてはまらない資金ニーズ。それに継続的に応えるには、省力化が大きなポイントになります。そこでITやデータ解析の力を最大限活用し、オンライン完結型にしたのです。
●「パートナーズローン」の特徴
(リクルートファイナンスパートナーズのホームページより)
1. 最短、お申込み日当日の入金
リクルートグループとの取引履歴を活用することで、迅速な融資を実現いたします。
2. 無担保・無保証
法人企業の事業性をもとに審査を行うため、代表者の保証も必要ありません。
3. 書面による資料作成不要
事業計画書、資金繰り表、決算資料などの資料作成、および紙での書類提出は不要です。
4. 借入可能額を即時回答
お申込みと同時に借入可能額をお知らせいたします。
5. 資金使途は自由
急な設備故障への支払い資金や閑散期の一時対応資金など、事業資金として様々な使途でご利用頂けます。
これまでにないサービスを生み出し、何年か後には社会の当たり前に
──「パートナーズ」ブランドによる中小企業者・小規模事業者の経営支援の今後の抱負、またこの事業にかける思いについて、最後に聞かせてください。
【小川】現在は一部業種に限定してサービスを提供していますので、まずはその領域を着実に広げていきたい。あわせて、サービスラインアップも拡大していきたいと考えています。事業者の課題は人材の確保や定着、間接業務の効率化をはじめ多様です。そういったさまざまな課題を解決し、経営をされる皆様、サービスをつくる皆様が本業に集中して、もっともっとこの国に元気な企業が増えることを願っています。
どんな企業も、不便、不足、不安……。いろいろな“不”を抱えています。私たちがサービスの開発や提供にあたって最も大事にしているのが、このお客様の“不”をいかに取り除いていくかということです。今回も、トランザクションデータを融資に活用するという新たな、そして技術的にも容易ではない取り組みを行ったわけですが、議論の中心にあったのは常に「それでお客様のどんな課題が解決できるんだ」ということでした。
これまでにないサービスを生み出して、それが何年か後には社会の中で当たり前になっている。そんなチャレンジを続けていくことが私たちにとってのやりがいであり、同時に存在意義でもあります。これからも、日々積み重ねている“お客様との接点”から得た情報やデータをしっかりと活かして、リクルートグループらしい課題解決のお手伝いをしていきたいと思います。