人口減少、少子高齢化の日本において、堅実な成長を続けるペット関連業界。1兆円を超える市場では、ペットオーナーの生活環境の変化をとらえた新たなトレンドが生まれ、多数のメーカーがしのぎを削っている。その中で独自の戦略によってさらなる発展を目指すのが、「かけがえのない、いのちに応える。」をスローガンに、食品からケア用品までを扱う総合ペット用品メーカーのペティオだ。住宅関連企業であるヤマヒサのペットケア事業部を昨年10月に分社化して誕生した同社の今とこれからについて、山田武史社長に聞いた。
ペティオ
1986年、住宅関連企業のヤマヒサのペット事業部(後にペットケア事業部)として発足。ペット関連食品からケア用品までを幅広く手がけ、2012年7月には上海ペティオを設立。Petioブランドの30周年にあたる16年にヤマヒサから分社化し、(株)ペティオとして新たなスタートを切る。
山田武史(やまだ・たけし)
1975年生まれ。早稲田大学大学院卒業(MBA)。会計事務所、ニューヨーク大学大学院日米経営経済研究所などを経てヤマヒサに入社し、2009年10月取締役ペットケア事業部本部長。12年上海ペティオ董事長。16年10月より現職。

日本の人口が減少する中にあって、ペットの飼育頭数は犬、猫いずれも約1000万頭、合計でおよそ2000万頭になります(※1)。国内の15歳未満の子どもの数が1600万人を下回る(※2)ことを考えると、これは非常に大きな数字といえるでしょう。

最近はペット業界でも商品セグメントの細分化が進み、ライフサイクルも短くなっています。また、核家族化や単独世帯の増加といった家族のあり方の変化や少子高齢化によって、例えばペットがシニアの方の散歩のパートナーになったり、夫婦の会話のきっかけになるなど、家庭内でのペットの役割もさらに広がっています。加えてマーケットにおいては、商品を飼い主が代理購買するため、人間の生活環境が消費に大きな影響を与えるという状況が生まれます。

これらを踏まえ、今ペット業界が注視すべきトレンドの一つが都市化でしょう。近年は小型犬や猫の室内飼育が増えており、当社の商品構成も、例えば屋外用の犬小屋から室内飼いのケージや猫の室内運動用のタワーなどへと移行しています。もう一つのトレンドがシニア化です。ペットの食事やケアにサイエンスの視点が入ることで長寿命化が進み、その介護などにも焦点が当たっています。ペットのシニアライフをサポートする当社の「zuttone」(ずっとね)シリーズの役割もより高まっていくと考えています。

こうした流れをとらえ、経営に生かすには、迅速な決断と行動が欠かせません。分社化により専業メーカーとなったことで、投資の意思決定をよりスピーディーに行える環境が整い、社員の意識の統一が進みました。幸い「petio」(ペティオ)ブランドも浸透しており、取引先の理解もあって順調な滑り出しを迎えることができたと感じています。

「ペットと人が幸せに暮らせる共生社会の創造」を目指す

そうした中、現在当社が重視しているものの一つが「デジタル化」です。これは、単にEコマースやネットを活用したプロモーションを拡充するといったことにとどまらず、市場動向の把握から商品開発、生産、販売にいたるまで、ITを活用して必要な情報を収集・分析・活用し、事業全体を強化していくということを意味します。

よりよい商品づくりのためには、お客様はもちろん、販売店などあらゆるステークホルダーから得た情報を、リアルタイムで把握、共有していく必要があります。例えば受注量に加え原料の供給状況などを生産拠点や倉庫、販売店などと共有できれば生産・販売面でのボトルネックがなくなり、サプライチェーンをより強化できるでしょう。また、お客様センターにいただいた声は私にも毎日メールで届くようにし、商品にかかわる重要な問題は工場などとも即座に共有する仕組みを整備しています。

近年はインターネットやSNSの普及によって、お客様の商品購入までの意思決定や購入方法も大きく変化しています。そこで当社ではお客様との双方向コミュニケーションを図れるよう、ホームページ、SNSの活用を強化しております。

当社はあらゆる商品を、ペットとのコミュニケーションのきっかけをつくるツールだと考えており、今後はその有効な活用法などを動画も使って詳しく説明し、ペティオならではの提案を行っていく予定です。それが新しいペット文化を創造し、「ペットと人が幸せに暮らせる共生社会の創造」という我々の思いを実現することにもつながると考えています。

文化や歴史を踏まえてこそ実りある改革が可能になる

私はこれまで、「革新性」をモットーに仕事をしてきました。経営においても、時々の状況を見据えた改革は不可欠だと考えています。ただ、真に革新的な、実りある改革を行うためには、物事の根底に流れる文化や歴史を把握しておくことが重要です。そこで、今回の分社化にあたっても、あえて「原点回帰」というスローガンを掲げました。

30年を超える歴史をもつ「petio」というブランドには、お客様、取引先、社員や元社員など多くの人の思いが詰まっています。そうした多様なステークホルダーとの双方向のコミュニケーションを続け、そのつながりを生かしながら、品質にこだわった商品を真摯に提供していくことで得たブランドへの信頼感は、当社のかけがえのない財産だと実感しています。今後、上海の現地法人を核に海外展開を進めていく中でも、この信頼感は大きな武器となるに違いありません。

激しく移り変わるマーケットの中で、ブランドを守り、育て、さらなる躍進を遂げるためには、自らが変化の一端となるべく改革を進めていく必要があります。目標の実現に向け、今後も必要となれば、何事にも臆することなく挑戦していくつもりです。

(※1)一般社団法人ペットフード協会「平成28年(2016年)全国犬猫飼育実態調査」より。犬:987万8000頭、猫:984万7000頭、合計:1972万5000頭。
(※2)総務省統計局より。こどもの数(15歳未満人口)1571万人(2017年4月1日現在)。