1 多方面への好アクセスで注目の圏央道沿線、中越地方─
1996年から段階的に開通を重ねている圏央道(首都圏中央連絡自動車道)。今年2月には茨城県区間が全線開通し、東名高速、中央道、関越道、東北道、常磐道、東関東道の6つの放射道路が接続された。都心から半径およそ40~60キロメートルの地域を走るこの道路はかねてより企業立地の観点からも注目を集めてきた。少し内側に位置する環状道路である国道16号線の周辺ではすでに用地探しが非常に難しいため、新たな選択肢として圏央道沿線に熱い視線が注がれているわけである。
その優位性は、言うまでもなくあらゆる方面への好アクセスである。都心部に近い一方で、渋滞する首都高を経由せずに東日本、中部、西日本などに移動することができる立地エリアは希少。製造業ほか多くの業種で、物流戦略が経営そのものを左右する時代にあって、優れた交通網は、立地先選定の重要条件の一つだ。同じ観点から、中越地域なども北陸道、関越道で多方面と接続しており、有望な地域といえるだろう。
地方都市には、充実した都市機能を備えながら、豊かな自然環境を有する自治体も多く、居住エリアとしての魅力を備えている。それは、企業が人材を確保しやすいというメリットにもつながる。
圏央道の近隣ほか、交通の要衝となる場所では、新たな産業用地を整備する動きも見られ、造成段階から人気を集めている状況だ。
2 地元企業の活性化への貢献は地方進出を成功させる鍵
自治体側は、どのような効果を期待して企業誘致に臨んでいるのか。一般財団法人日本立地センターの調査(※)によれば、その内容は以下のとおりだ。
「雇用機会の確保」「税収の確保」は当然のところだが、「地域企業への受発注機会の拡大」「地域産品・資源の利活用」といった回答にも注目したい。新たな企業の進出によって、地元の企業や産業が活性化する相乗効果を多くの自治体が求めているわけだ。
企業側が進出地域にメリットを提供することができれば、両者のパートナーシップはより強固なものとなる。それは新規立地を成功させる鍵でもあるだろう。
3 企業の要望に応えながらきめ細かさを増す誘致活動
企業誘致に関わる自治体の取り組みについては、以下のようなものが上位を占めている(※)。トップは「工場跡地・遊休地、空き工場等の情報収集・提供」。これは、近年企業側が居抜きの空き物件などを求める傾向が強まっていることを反映している。一方で、「工場等を誘致するための用地整備」も8ポイントほど上昇しており、新たな造成が進んでいることもうかがわせる。
そのほか「特定の業種・業態等に絞った優遇措置の実施」「条例・規制緩和の実施」など、自治体は戦略性のある取り組みも進めている。自社の事業と合致する地域を見いだすことで、有利な進出が可能となる。
(※)一般財団法人日本立地センター「企業誘致及び産業振興に関するアンケート調査結果」(全国の市町村及び東京特別区への調査:平成29年1月27日~同年2月20日)