東京都心から北西約50キロに位置する埼玉県東松山市。2017年2月に首都圏中央連絡自動車道(圏央道)が開通し、千葉県や神奈川県へのアクセスが向上。製造業の物流拠点が集まり、人口も増加して注目を集めている。そんな東松山市内を一巡すると、工場のそばや住宅街の中で、モダンなデザインのアパートが目に留まる。これが松堀不動産の手がける新築デザイナーズアパート「アルメゾン」だ。
1973年創業の松堀不動産は、半世紀にわたり地元に根を張って土地の取得から建物の建築設計、賃貸仲介や管理業務まで手がけてきた総合不動産会社だ。同社が2005年に販売を開始した投資用アパートが「アルメゾン」。最大の特徴は、10年間の契約期間内は、家賃を変えずに定額保証する独自のサブリース契約にある。
一般的なサブリースは2年ごとに賃料を見直すケースが多い。特に新築の場合はその後の下落幅が大きく、設計当初の家賃で利回りを想定していた場合は、収支の再計算を迫られる。10年間家賃定額保証は、まさにそんな悩みを解消するサービスだ。「アルメゾン」の販売開始から12年が経過したが、ほとんどのオーナーは条件を変えずに再契約を結んでいるというのも納得だ。
都心に近い郊外という地の利を生かす
投資家にとって10年間の定額家賃保証は大きな魅力。半面で不動産会社にとっては家賃下落や空室というリスクを抱えることにもなる。なぜ、10年定額家賃保証という仕組みが可能なのか。松堀不動産の堀越宏一社長は「『都心に近い郊外』という地の利と、物件のクオリティーという2点が収益の源泉です」と話す。
「不動産投資は都心の駅近物件を選ぶのがセオリーとされていますが、外に目を向ければ、東京にほど近い郊外で、人口に厚みがあり、良質なアパートを求める地域は確実にあります」
東松山エリアは関越自動車道と圏央道が通っている利便性の良さから自動車や食品、衣料品など全国展開する大手企業の生産工場や物流拠点が集まっており、単身向け賃貸物件の需要は強い。松堀不動産では、工場近くにも「アルメゾン」を建設し、法人の社宅ニーズにも応えている。
「東京では過剰競争が起きて土地や物件価格が高騰していますが、値上がり分を家賃に転嫁できるかといえば、限界があります。そうなれば必然的に、利回りは低下します。その点で東松山の土地相場は都心に比べて圧倒的に低いという強みがあります。近隣で商圏が大きい川越市と比べても地価は3分の1程度でありながら、ワンルームの家賃相場は9割程度の月額5万円~5万5000円を維持できています。『アルメゾン』の場合、建設資金に8000万円程度かかったとして実質利回りは6%強です」
ゆとりある住環境を求める賃貸ニーズを捉える
肝心な入居率はどうか。労働人口の流入に自社ブランドの「アルメゾン」が提供する快適な住環境が相乗効果となり、入居率は約96%に上る。
「アルメゾン」は間取りはワンルームでも、床面積は25~40平方メートルと広さとゆとりを重視。内装は白を基調としたデザインで、バス・トイレ別、システムキッチン、カメラ付きインターホン、駐車場を標準装備している。単身者向け賃貸アパートでここまで充実している物件は珍しい。
「私たちが長年賃貸仲介や管理に携わる中で感じていたのが、入居者のニーズと物件のミスマッチです。かつてワンルームは、学生さんなどの短期入居を前提としていました。それゆえに住宅設備は最低限で、居室が狭めでもよかった。けれど現在は賃貸住宅の位置づけが変化しており、入居者はワンルームであっても暮らしにゆとりを求めるようになっています。そのニーズに応えたことが、結果的に入居率につながっています」と堀越社長は話す。
さらに入居者を引き付けるのは、敷金、礼金、不動産仲介料などが0円の「楽ゾウプラン」という独自制度だ。東松山駅前には賃貸の競合事業者も多いが、初期費用がかからないこのプランを用意することで同社は入居者募集の面で圧倒的に有利になる。建設、募集、管理まで、すべて引き受けるため、介在する事業者が少なく手数料を抑えられるという強みが生きている。
また地場の総合不動産会社ならではのネットワークも頼もしい。長年地主や金融機関と信頼関係を構築してきたため、適地の情報入手が素早い。
「時代が変化していく中で、アパート建設もよりニーズに合ったものへと変わっていくべきです。家余りの時代といわれますが、良い家であれば人が付くことは証明済み。こうした試みが、さらに地域に人を呼び込む一助となるはずです」
不動産投資が活気づき、都心への集中傾向が見られる中で、「都市近郊」と「1棟買い」に焦点を当て、不動産投資を成功に導く方法を紹介した一冊。売却などの出口戦略へも言及している。