再生可能エネルギーの普及は、温暖化対策の鍵の一つ。しかし日本では固定価格買取制度の見直しが行われるなど、転換期を迎えているのも事実だ。そうした中、「ガレージなどの屋根を太陽光発電スペースとして借り、賃料を支払う」という独自の仕組みで、再エネの着実な普及を後押ししている企業がある。優れた強度を持つ鉄骨ガレージ、倉庫などの製造販売で評価されるカクイチだ。
同社製品の購入者が「わっとわっとプロジェクト」と呼ばれる取り組みのパートナーに登録すると、カクイチは自社負担でその屋根に太陽光パネルを設置。パートナーには屋根部分のレンタル料が支払われる。災害時の非常用電源として使用でき、温暖化問題にも貢献できるとあって、本サービスの契約数は2013年の開始から約3年半で7500件を超えた。
さらにカクイチでは今年9月より、この屋根レンタルの仕組みを取り入れた新製品の販売を開始している。カーポートや資材置き場として利用できるスペースの屋根部分に太陽光発電パネルを用いた「e-hizashi」だ。同社の田中離有社長は、開発の経緯を次のように説明する。
「おかげさまで『わっとわっとプロジェクト』へのご賛同者は全国で着実に増え、熊本在住のパートナーの方からは『震災時に、非常用電源として携帯電話の充電や炊飯に役立った』という声もいただきました。そこで、同じ仕組みをより利用しやすい形で提供したい。そう考えました。『e-hizashi』なら、非常用電源の付いた屋根付きスペースを一般のカーポートよりリーズナブルに入手することが可能です」
ニッポンの未来に貢献する発電モデルを
「e-hizashi」は頑丈なカクイチ製の駆体に、平置きでも高い発電効率を誇る太陽光パネルと一体化した屋根が付いたもの。大きさは、間口約6.7m、奥行き約5m、軒高約2.8mで、カーポートとして車を2台駐車できるほか、資材置き場、作業スペースなど、さまざまな形での活用が可能だ。料金は「29万9800円」だが、屋根部分について20年間の賃貸借契約を結ぶと、約半額の「14万9800円」で購入できる。これなら一般的なアルミ製カーポートの約半額だ。
「商業施設、公園、賃貸住宅、病院など、あらゆる施設で駐車場、また雨よけ、日よけのスペースとしてご利用いただけます。そしてそれが、万一の際は非常用電源としても役に立つことになります」と田中社長。施工はカクイチで責任をもって行い、メンテナンスも20年間対応なので安心だ。その高い品質と安心感が評価され、長野県千曲市など地方自治体での採用も予定されている。
最後に田中社長は言う。
「エネルギー自立の面からみても、地域に根づいた発電モデルは今後ますます重要になるはず。その実現には、ユーザーが具体的なメリットを得ながら、無理なく自然な形で環境に貢献できる仕組みをつくっていくことが重要です。当社としては、まさにその観点から、単に製品ではなく、一つの仕組みとして『e-hizashi』を提供していきたい。多様なサプライヤー、ユーザーと連携し、日本中に小さな発電所を広げていくことができればと考えています」