力む必要はないが正しい発音、文法で
──光藤さんと英語との出合いについて聞かせてください。
子どものころ教会の日曜学校に出かけたり、海外の児童文学を読んだりして欧米に憧れ、英語に興味を持ちました。小学校6年生でラジオの「基礎英語」を聞き始め、きれいな英語の音に魅せられたのを覚えています。そして高校生のとき、交換留学生として米国中西部の田舎町で約1年過ごしました。日本人は一人もいません。最初は英語のスピードについていけず必死でしたけど、振り返ってみると日本語を一言も話さない環境が語学の習得に大いに役立ちました。
──「品格のある英語」を大切にするようになったきっかけは?
英語にも、上品な表現や、きちんとした場で使う敬語表現はたくさんあります。ビジネスの現場では、やはりそうした英語を使いこなすことが大切です。私自身、就職した通訳派遣会社の社長から「英語は流暢だが、話し方はアメリカの高校生レベル。発音も不正確で中途半端」と指摘され、ショックを受けた経験があります。単に英語が話せることと、仕事で英語を使うことは違うんだと実感し、大人の英語、品格のある英語を意識するようになりました。
──そうした英語を使いこなす具体的なポイントは?
まず大切なのは、上手でなくてもいいから、きれいに発音すること。特に私は、母音の発音をしっかりするように指導してきました。英語には、日本語にはない母音がたくさんあります。例えば、work[wrk]とwalk[wk]の発音が区別できなかったり、farm[frm]とfirm[frm]の母音の違いが曖昧だったりする人は多いもの。曖昧だと何を言っているのか伝わりません。
子音については、後に母音をつけて補わないことが大事。例えば「street」が「ストリート」とジャパニーズイングリッシュになってしまう人は少なくありません。また日本人は、ネイティブのように話そうとして力みすぎるきらいがあります。例えば「r」の発音。アメリカ英語ではこれを強調する傾向がありますが、きつく発音すると聞きづらくなります。
そして、もう一つのポイントは文法です。例えば冠詞や時制がおかしいと残念な英語に見える。文法は難しいと感じる人が多いけれど、英文法を世界で一番勉強しているのは日本人といってもいいでしょう。大学で教えていたとき、アメリカ人の先生から「because」「since」「as」(それぞれ「~だから」を意味する)の違いを逆に質問されて驚きました。「日本人のほうが文法を知っているから」って。中学と高校で文法をちゃんと学んだ人は自信をもって、磨きをかけてください。