情報過多の現在、それに埋もれることなく、確かな管理と活用を実践するには何が必要か──。ジャーナリストとして、大学教授として、膨大な量の情報と向き合う蟹瀬誠一氏に語ってもらった。
蟹瀬誠一●かにせ・せいいち
明治大学 国際日本学部 教授
国際ジャーナリスト

1974年、上智大学文学部新聞学科卒業。米AP通信社記者、仏AFP通信社記者、米『TIME』誌特派員などを経て独立。テレビやラジオでキャスター、パーソナリティーを務める。2004年より明治大学文学部教授、08年から13年まで同大学国際日本学部長を務め、現在は同学部教授。

あらゆる情報は、2種類に分けることができる。一つは、受け手に何らかの気づきや価値を与えてくれるシグナル。もう一つは、価値を生まないだけでなく、シグナルが届くのを邪魔するノイズです」

報道の現場で、大学で、さまざまなニュースやデータと向き合ってきた蟹瀬誠一氏はこう語る。そして、各種メディアから、また仕事の中で社内外から届けられる情報のうち、「9割はノイズと思っていい」と付け加える。

確かに、ストックされた資料やデータを思い返すと納得がいく。また本来は価値ある情報であっても、必要なときに取り出すことができなければ、それもまたノイズといっていいだろう。保管する資料の中から、これという一枚が見つけられなかった経験は誰しもあるはず。情報をシグナルとできるか、ノイズにしてしまうか。それは、その収集方法や管理方法によっても変わってしまうのだ。

「そうしたなかで、まず求められるのが情報の取捨選択です。私の場合、例えばネットでの情報収集は、朝の15分間、自分で絞り込んだ信頼できるサイトからだけ行う。量より質を追求することでノイズをコントロールしています。そして資料の管理については、書類が机に積み上がっていったら“負け”と決めている(笑)。整理整頓は必ずしも得意な方ではありませんが、これも自分なりの基準をつくっておかないと収拾がつきません」

思わず書類が山積みになった自身のデスク周りや自宅の書斎が頭に浮かんだ人も少なくないかもしれない。しかし今の時代、そうした課題を解決してくれる機器が多数登場している。蟹瀬氏も、紙の資料とデジタルデータを一元管理するのにスキャナーを活用している一人だ。

「新聞や雑誌の興味深い記事を残しておくということは普段からやっています。あとは自分の書いた記事もそう。原稿のデータよりも、誌面の方が最終の情報ですから。紙の資料をデジタル化する利点の一つは劣化しないこと。破れたり、傷んだりということがありません。それに今は、クラウド上にデータを上げておけば、どこからでも取り出せる。これが便利ですね」

そう語る蟹瀬氏に、今回、エプソンのA4シートフィードスキャナー「DS-560」を試してもらった。その機能や使い勝手はどう映ったか──。

ストレスのない読み取り速度
OCR処理もスムーズ

「まずコンパクトなのがいいですね。普段はコピーやプリンターと一体になった複合機を使っていますが、この大きさならデスクの上に置くことができる。デザインもシンプルで好みです。そして、見た目以上に感心するのは読み取りの速さ。スキャナーの最も基本的な機能ですが、束になった資料がスーッ、スーッと読み取られていくのは気持ちがいい。こうした機器は、やはり利用時にストレスがないことが必須条件。長く使い続けられるかどうかの決め手になります」

さらに、毎分26枚という読み取りの速さに加えて蟹瀬氏が評価したのがOCR処理のスムーズさだ。OCRとは、スキャンした紙の文字をテキストデータとして認識する機能のこと。雑誌の記事や書類にこの処理を施せば、後からキーワード検索でスキャンしたデータを探し出すことが可能だ。「DS-560」には、ワードやエクセル、パワーポイントのファイルに変換するソフトウェア※も付属している。

「言うまでもなく、デジタルデータの強みの一つが検索性の高さ。OCR処理をすれば地名でも固有名詞でも全文検索ができるので重宝します。それに書類からテキストデータが取れれば、自分で加工することが可能になる。資料を引用して、原稿やレポートをまとめるときにも役に立ちますね」

そして、このOCR処理は名刺の管理にも力を発揮する。付属のソフトウェア(※)を使えば、スキャンしただけで会社名や氏名、住所などを自動的に認識し、整理してくれるのである。

「多いときには月に100枚以上交換するので、名刺管理は長年悩みの種。いろいろ試しましたが、これは使えそうですね」と蟹瀬氏も納得の表情だ。

※WindowsR専用ソフトウェア