2015年10月30日、ベネッセホールディングスは、原田泳幸代表取締役会長兼社長が14年6月に着任以来、初めての「中期経営計画」を発表した。グループ全体の変革に向けて主力商品の「進研ゼミ」も創業以来最大のリニューアルを行う。少子高齢化が加速する中、教育事業、介護事業を手掛ける同グループはどう歩みを進めるのか。目指すべき未来像とそれにかける思いを原田泳幸社長が語る。
株式会社ベネッセホールディングス
1955年、福武書店として創業。「進研模試」、通信教育「進研ゼミ」で急成長を遂げる。1990年にラテン語の造語「Benesse(ベネッセ)=よく生きる」を基本理念として掲げ、事業を多角化。1995年、ベネッセコーポレーションに社名変更。2009年に持株会社・ベネッセホールディングスに移行。事業領域を「国内教育」「海外教育」「生活」「シニア・介護」「語学・グローバル人材教育」とし、現在に至る。
逆風の中でも粛々と進めた「中期経営計画」の策定作業
私が社長に就任したのは一昨年の6月のこと。翌月に個人情報の流失事故が表面化しましたが、実はそれ以前の7月2日に経営方針説明会を開催。就任後、事故対応ばかりに追われていたわけではなく、説明会で述べた経営方針に沿って新商品戦略と組織変更を並行して進めていたのです。
これをさらに具体化し、今後のベネッセのビジネスの行動指針となる「中期経営計画」に着手したのは2015年4月から。手がけたのは、外部から新たに招いた10名のCxO(経営幹部)と各事業カンパニーの生え抜きのリーダーを加えた混成チーム。ポイントは「グループ経営」「事業ポートフォリオの最適化」「グローバル展開」の3つです。
グループ経営では、傘下のグループ会社の戦略を明確化。足し算ではなく掛け算の効果をもたらす事業シナリオの再構築を考えます。
事業ポートフォリオの最適化では、進研ゼミに依存していたビジネスモデルのバランスを再考。年1回という購買サイクルの長い商品だけでなくリスク分散の観点から、短い商品の組み合わせを模索することとしました。
グローバル展開については、すでに中国市場において幼児向け通信講座「こどもちゃれんじ」の会員数が、早くも日本での会員数を超えて89万人に達しました。発達段階に応じて幼児の成長を支援する「こどもちゃれんじ」のノウハウは国を超えたスタンダードとなりうると考えています。今後は中国以外の市場展開も視野に入れ、幼児教育分野の世界一を目指していきます。
創業以来、最大のリニューアル
「進研ゼミプラス」の導入
今年4月から「進研ゼミ」は「進研ゼミプラス」へ、創業以来最大のリニューアルをします。iPad(※1)を活用することで子供たちへの個人別対応が飛躍的に進化。お子さんの目標や学習進捗、日々の学習履歴などを分析、一人ひとりに適切なタイミングで適切なレベルの教材を提供、「赤ペンコーチ」(※2)をはじめとする「人」が働きかけます。子供たちをしっかり見守りつつ、学力だけでなく、自ら考える力、学び続ける力も育むことを指向。デジタル技術も活用しますが、子供の頑張りを認め、やる気を引き出すのは添削指導の赤ペン先生や赤ペンコーチといった「人」の価値であり、この点を重視する姿勢は変わりません。
※1 iPadは、米国および他の国々で登録されたApple Inc.の商標です。
※2具体的なサービス内容は、学年により異なります。