“働き手”が少なくなっている日本。経営者にとっての悩みは、「どのように人材を集めるか」となっている。特に深刻なのは、常に多くのアルバイト・パートが勤務する店舗。そのような中、アルバイト・パートから派遣、正社員まで多種多様な雇用領域に携わる、リクルートジョブズの執行役員 仲川薫氏は、「シフト管理の在り方を変えることで、状況は改善される」と語る。その真意を仲川氏に伺った。

働き手の“志向の変化”は人手不足解消のチャンス

株式会社リクルートジョブズ
執行役員 仲川薫 氏

「フロム・エーナビ」、「タウンワーク」の編集長を歴任ののち、2013年4月より株式会社リクルートジョブス 執行役員に就任。現在は、同社のメディア事業、IT部門、新規事業開発の責任者を務める。

少子高齢化による人手不足が叫ばれて久しい。たとえば“生産年齢人口”と言われる15歳〜64歳の総人口は、2000年の約8,638万人(総務省「国勢調査」より)から、2014年には約7,785万人(総務省「人口推計」より)まで 減少している。また、有効求人倍率もここ数年で一定の上昇を続け、2015年12月で1.27倍 となっている。

そんな人手不足の影響が特に大きいのは、アルバイトやパートを多く雇うチェーン店や小売店。しかし、そういった現場では、労働力人口の減少に加えて人手不足を引き起こすもうひとつの変化が起きているという。仲川氏が説明する。

「これまでのアルバイトやパートは、1日4時間以上で週3日以上など、長時間・複数日数の勤務を希望する人が多かったんですね。しかし最近は、もっと短時間で働きたいという人が増えているんです。たとえば学生に調査してみると、バイトにかける時間は以前より減少していました」

リクルートジョブズが運営する求人情報メディアの『タウンワーク』でも、週の最低勤務日数が「1〜2日」、そして1日の最低勤務時間が「1〜3時間」という、短時間勤務の求人案件が増加しているという。そこからもそのような働き方へのニーズが高まっていると言えそうだ。

また、リクルートジョブズによる「主婦の就業に関する1万人調査(2013年 )」においても、子育て中の20~49歳の既婚女性に“働きたくても働けていない理由”を聞くと、「希望する終業時間が合わない」「希望する始業時間が合わない」「希望する1日の就業時間の募集が少ない」「希望する就業日数の募集が少ない」という意見が上位4つを占めた。いずれも時間の問題である。

「1人の人が長く働くということも大切な一方で、“働きたい人が働ける時間だけ働く”など、様々な働き方を社会全体が受け入れていくことも、これから先は求められるようになると思います。リクルートジョブズとしては、フルタイムで働きづらかった人が働く機会を得られるよう、これまでも解決策を模索してきました」(仲川氏)

働き手の“志向の変化”が、アルバイト・パートの人手不足に拍車をかけているのは間違いない。だが仲川氏は、逆にこの現象と向き合うことで「人手不足を解消できるチャンスにもなる」と考える。

「週1日の出勤や、1日数時間のシフトであれば、働きたい人は少なからずいるということです。しかし、今のシフト管理ではそういった人が希望通り働ける環境を整えることができません。働きたいけれど働けていない人たちの要望に沿ったシフト管理が可能になれば、働きたい人の希望が叶い、雇用する側にとっても人手不足の解消につながるのではないでしょうか」

多様性や個性を受け入れていく時代の中で、仲川氏は「働きたい時間、働ける時間もその人の個性。企業側も勤務時間を固定せず、その個性に向き合う姿勢が重要になってきている」と言う。