相続税制の改正により、基礎控除が40%もカットされた。一方で多様な節税策もあり、知識や情報の有無でますます差が付く時代といえる。よりよい相続のために知っておくべきことは何か。相続専門の税理士、内田麻由子さんに聞いた。

内田麻由子●うちだ・まゆこ
一般社団法人日本想続協会 代表理事
内田麻由子会計事務所 代表

相続専門の税理士として、相続対策、事業承継対策、相続税申告業務を数多く手がける。武内優宏氏との共著『誰も教えてくれなかった「ふつうのお宅」の相続対策ABC』では、豊富な事例も盛り込みながら、相続対策を具体的に分かりやすく紹介している。

 

“ふつうのお宅”も
課税の対象に

──いよいよ今年1月に、相続税制の改正が施行されました。どのような点に注意しておくべきでしょうか。

【内田】一言でいえば、“ふつうのお宅”も相続税について考える必要が出てきたということでしょう。仮に配偶者と子供2人が相続人だったとして、昨年までは8000万円の基礎控除がありました。それが今年からは4800万円に。都市部に一戸建てを持ち、ある程度預金があるお宅は、十分に相続税の課税対象となる可能性があります。

関連して注意してほしいのが、相続税の申告義務についてです。よく、「うちは配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例のおかげで税金はかからないから申告の必要はない」という人がいますが、これは誤り。これらの特例は、あくまで申告した場合に適用されるものです。つまり特例を使いたければ、申告をする必要があるわけです。

──細かいルールがあり、制度の改正も頻繁に行われる相続税。やはり情報収集が大事ですね。

【内田】おっしゃるとおり。税務署は有効な節税方法があっても、「こうすればだいぶ税金を減らせますよ」とは教えてくれませんから(笑)。例えば、一次相続、二次相続の問題などもしっかり考えておきたいことの一つですね。

配偶者の税額軽減があるからと、一次相続の際、奥様がすべての財産を相続することがあります。確かにそれで、一次相続の税金をゼロにしたり、節約することは可能です。しかし、奥様が亡くなったときの二次相続まで考えると、「一次相続の段階で、ある程度子供にも相続させたほうがトータルの相続税は安かった」というケースは少なくありません。細かい計算は省きますが、仮に旦那様が2億円の財産を残した場合、1700万円以上の差が付くこともあります。

──節税対策として、賃貸住宅経営などもよく話題に上ります。

【内田】私も土地活用のセミナーなどに講師として参加することがありますが、関心は高いですね。親子で出席されている人たちもいらっしゃいます。実際、借地権割合、借家権割合などにより、不動産の評価額はかなり下がりますから、この仕組みを上手に使うことで大きな節税効果を得ることができます。

ポイントとなるのは、長期的な視点と出口戦略でしょう。賃貸住宅経営は何十年にもわたる事業となりますから、将来をきちんとイメージしておく必要があります。建築やその後の運営にあたっては不動産会社やハウスメーカーなどとの連携が不可欠でしょうから、長期的なプランや出口戦略について真摯に相談に乗ってくれるか──この辺りをパートナー選びの基準にするのもいいかと思います。