心得2
独自のサービスで地域の需要をつかむ

田中律子●たなか・りつこ
株式会社川原経営総合センター
経営コンサルティング部門
シニアコンサルタント

在宅系介護事業所や介護請求ソフト会社を経て、医療福祉経営コンサルタント企業である川原経営総合センターに入社。介護事業を中心に中長期戦略や新規事業設立、研修体系、人事制度構築など経営的視点におけるコンサルティングに携わる。ISO9001審査員補、医業経営コンサルタント資格。

高齢者向けに特化したサ高住だが、「ほとんどの場合、土地オーナーの役割は、通常の賃貸住宅経営と同じと考えてよいでしょう」と田中氏は話す。「サ高住の経営は、建物と土地を運営事業者に貸し出すサブリース契約を結び、募集や運営・管理をゆだねるケースが一般的。土地オーナーは空室の有無などにかかわらず、一定の収入を得られます」。

しかしいくらサブリース契約を結んでも、肝心のサ高住の経営が軌道に乗らなければ安定収入を見込むのは難しい。「サ高住の入居率や経営状態は千差万別です。今後ますますサ高住が増えていく中で成否を分けるのは、地域の需要をつかむ独自サービスを提供できるかどうかです」。

サ高住は運営の自由度が高く、基本となる「賃貸住宅」にどのようなサービスを加えていくかは事業者にゆだねられている。土地オーナーの考え方次第では、要介護度の高い人を受け入れる介護型サ高住はもちろん、上質な住空間を備えたアクティブシニア向けの自立型サ高住や、看護師が常駐するなど医療ケアに特化したサ高住を運営することも可能だ。

「これまで高齢者施設を手がけるのは介護事業者が中心でしたが、サ高住の登場によって裾野が広がり、不動産事業者や医療法人、ハウスメーカーなどさまざまな強みを持った企業・団体が参入しています。幅広い経営ノウハウを有した事業者と提携できるかはポイントの一つですね」

心得3
コミュニティづくりの視点を持つ

地域の実情に応じた多様なサービス提供が可能なサ高住。しかし自由度の高さゆえに、どこまでサービスを充実すべきか、見極めが難しい面もある。「看護師や見守りにあたる夜間職員配置などを充実させれば、当然、人件費として跳ね返ってきます。運営事業者としても、介護報酬などの収入面の手当がない支援をどこまで充実させるべきか、採算とサービスのバランスを見極めているのが現状です」。

そこで田中氏が重視するのが、「生活者の視点」を持つことだ。

「例えば買い物や通院の支援なら、介護保険に頼らず、自治体と提携してコミュニティバスのルートを誘致するといった工夫があってもいいでしょう。自分が将来そのサ高住に住んだとき、どう暮らしたいか、どんな手助けが欲しいかを考えてみれば、おのずと対策が見えてくるはず。サ高住建設を考える土地オーナーには、ただ建物を提供するだけではなく、地域と関わり、コミュニティづくりに貢献していく視点を持ってほしいですね。それが結果的に、サ高住の価値を高め、安定経営をもたらすはずです」

サ高住は賃貸住宅としての機能に加え、高齢者の暮らしを支える社会基盤の性格を有する。土地の有効活用が求められる時代だからこそ、社会貢献という新たな価値を持ったサ高住の可能性を探ってみたい。