近年、人間ドックに対するニーズは多様化、細分化している。今後の健康維持に役立てるために、知っておきたいポイントの解説を、医療法人社団相和会の土屋敦理事長、同会・横浜ソーワクリニック、横浜総合健診センターの別府宏圀院長、髙橋直樹副院長にお願いした。
人間ドックに求めるのは
「異常がないことの確認」
受診者数が20年前の7倍超ともいわれる人間ドック。受診側のニーズが一様でないのも当然だろう。これを受け今日では、さまざまな特色をもつ施設が登場している。近年は、エグゼクティブ層をはじめ、健康志向が特に強いビジネスパーソン向けに、検査内容やサービスをより充実させた人間ドックも増えてきた。そうした進化の現状について、専門家はどう感じているのだろうか。
【土屋】ビジネスパーソンの皆さんが勤務先や健保組合の補助で人間ドックを受ける場合、受診コースなどに制約があると思います。そこで自己負担額が増しても一段と高度な検査を望む方々のために、多くのドックがオプション検査の拡充などに努めています。またプライバシーを守るために、他の受診者と顔を合わせずに済む環境を整えるなど、サービス面のクオリティーにこだわった施設もありますね。合わせて、女性がリラックスして受診できるような気配りも、徐々に浸透してきたといえるでしょう。
【別府】「健康管理は自己責任」という考え方が広まり、自分の身体の状態を詳しく知りたいという意識も高まっています。昨今は目で見て分かりやすい画像検査に関心をもつ方々が多くなり、精密なCTやMRIなどを備えたハイグレードなドックを好まれる方々もおいででしょう。いまやご要望も、それに応える選択肢もさまざまです。
【髙橋】人間ドックには半日以上を費やしますから、居心地の良さは重視されますね。あるいは、例えば喫煙歴の長い方々などが高精度の肺がん検査を希望し、施設選びの基準にするといったケースもあるでしょう。
そもそも人間ドックには「病気の早期発見」という役割もありますが、「異常がないことの確認」を求めている方々のほうが多いのではないでしょうか。特にエグゼクティブと呼ばれる皆さんは、「自分が健康である」と自覚できることが、重責を果たす自信にもつながるようです。
「個人の基準値」も考慮し
経年変化の観察が重要
検査結果票には、必ず「基準値」が記されている。これは「この数値のレンジから外れている場合、疾病リスクが高い」という予防医学的な考え方を踏まえたものだ。異なる施設で受診すると分かるが、基準値の設定が若干違うこともあるし、同じ検査を受けても、機器によって数値に差が生じることもある(許容範囲の分析誤差)。
ともあれ受診者は数値の増減に一喜一憂し、結果票に基準値を外れている印が付くのは、心情的にきわめて切実な問題である。では検査数値を、どう読み解いたらいいのだろうか。