「血管の衰えが、EDの要因の一つなのです」と説明する丸善クリニック(名古屋市)の早瀬喜正院長。「治療法は進化しています。ぜひ、充実した人生の実現に生かしていただきたい」と呼びかける。

早瀬喜正●はやせ・よしまさ

丸善クリニック院長
1967年、名古屋大学医学部卒業。同大学大学院博士課程修了。米国メーヨークリニック留学、ジョンズ・ホプキンス大学留学、名古屋大学医学部泌尿器科学非常勤講師、愛知医大泌尿器科学講師などを経て、1981年、クリニック開業。日本泌尿器学会専門医・指導医、日本性感染症学会認定医、日本臨床抗老化医学会認定医、愛知県泌尿器科医会理事など。

丸善クリニックホームページ  http://www.seisinkai.com/

 

症状が教えてくれる
重大な病気の危険とは?

──勃起のメカニズムとEDについて教えてください。

【早瀬】脳から性的興奮が陰茎の神経に伝わると、陰茎動脈から陰茎海綿体に血液が流れ込みます。すると、陰茎海綿体が膨らむ。これが勃起の仕組みです。正常な勃起は、性的興奮により神経からNO(一酸化窒素:血管を拡張させる役割)が分泌され、血管が拡張して勃起が起こり、その後は、血管自体からもNOが出て勃起が維持されます。しかしNOの分泌が減ると、血管が十分に拡張しなかったり、勃起をしても維持するのが難しくなります。これがEDです。

出典:白井将文 男性性機能障害正しい知識と診療の実際 永井書店 2001より抜粋・作図

EDを分類してみると、血管の老化によって陰茎動脈が細くなり、陰茎海綿体への血流が減って、動脈硬化の初期症状として勃起に障害が起こる「器質性ED」。ほかに緊張やストレスがその背景にある「心因性ED」です。さらに、原因は必ずしも一つとは限りません。一部の患者さんには、器質性と心因性の混合型EDも見られます。

──患者さんの年齢層は?

【早瀬】以前に比べると若年層の来院も増えるようになり、心因性EDに悩む患者さんが目立っています。ただ一方で、例えば30代でも、器質性EDが疑われる方々は増加しつつあるのではないか、というのが診察室での実感です。なにしろこの年代の患者さんには、肥満体型の方が多くなっていますし、喫煙率も高めという印象を受けます。これらは動脈硬化の危険因子ですからね。

──といいますと、メタボリックシンドロームや生活習慣病がEDと関係しているのでしょうか?
Montorsi F et al: Eur Urol 44:360-4,2003

【早瀬】そのとおりです。年齢的には若年だからといって、油断は禁物です。血液中の脂質異常や高血糖、それに高血圧は、全身の血管の老化を進行させますので、なかでも非常に細い陰茎動脈では、早くからEDという自覚症状が出てくるわけです。

心筋梗塞や脳卒中の患者さんには、「以前からEDを自覚していた」という方の割合が高いというデータもあります。したがってEDは、「このままだと、より重篤で生命にかかわる生活習慣病に至ってしまう」という警鐘を、早い段階で鳴らしてくれているともいえるのです。

現段階では症状を感じていなくても、普段のカロリー摂取量が気になっていれば、できるだけ抑えるよう努めたほうがいいですね。メタボを改善することが血管の健康を守り、EDをはじめ、他の生活習慣病を予防することにも役立つのですから。