11月に開催される「三井住友VISA太平洋マスターズ」で過去3回の優勝を誇る中嶋常幸プロ。一方、室田淳プロは同トーナメントのコースレコードを持つ。30年を超えるキャリアを持ち、レギュラーツアーとシニアツアー双方で活躍する両氏。プロとして、さらに輝き続けるための原動力について語り合った。
──お2人は同世代で、同じ群馬県出身。お互いの印象はいかがですか?
中嶋常幸●なかじま・つねゆき
1954年生まれ。10歳の時からゴルフを始める。レギュラーツアーで賞金王4回。三井住友VISA太平洋マスターズでは85年、2002年、06年に優勝。

【中嶋】僕が一つだけ年上。「三井住友VISA太平洋マスターズ」では、2002年に僕が2回目の優勝をして、その翌年が室田君。同じ48歳での優勝というのも不思議な縁を感じるね。最近もシニアツアーでは目の前で優勝をさらわれたり、逆に僕がワンストローク差で勝ったり……。僕が勝ったとき、室田君が「いや~楽しかった」と言ったのには感心した。こっちは、相当苦しかったんだけど(笑)。

【室田】優勝争いでは、追いかける方が楽しいんです。ただ、僕はそうやって、過去何回2位になったことか。優勝者を輝かす役回りが多い(笑)。

【中嶋】でも、シニアでは賞金王3回だよね。その底知れぬ頑張り力が、僕にとってはいい刺激。ライバルです。

【室田】ライバルなんて光栄です。中嶋さんはゴルフ界の宝。実績もそうだし、競技を通してゴルフの楽しさはもとより、人の生き方を伝えている。いつもすごいなと思っています。

自分を受け入れ
技術力、精神力を磨く

──競技を続ける中で、ステップアップにつながった経験や出来事を教えてください。
室田 淳●むろた・きよし
1955年生まれ。19歳からゴルフを始め、82年にプロへ。シニアツアーで賞金王3回。三井住友VISA太平洋マスターズでは2003年に優勝し、コースレコードも持つ。

【中嶋】40代で前に進む力が少し弱まったときに「僕にとってゴルフって何だろう」と考えた。なかなか勝てないし、ずいぶんもがいた。そんな中で一つ思ったのは、できない自分を受け入れようということ。「お前はよくやっている」とね。それで自分を好きになれたし、あらためて「ゴルフが天職だ」と感じられた。自己受容の能力が高いと、自然にポジティブで意欲的になれる。室田君は、僕が悩んだ40代から輝き始めたという印象があるね。

【室田】僕の場合、結果が出ないのは自身の技術不足。そう思っています。その意味で、自分を受け入れることはやっぱり大事です。プロ転向後も力不足で、試合にも出られない時代があって、初優勝は10年目。でも、ゴルフを辞めたいとは一度たりとも思わなかった。技術が足りなければ、それを身に付ければいいと考えていたから。常に、もう一歩、もう一歩という意識でやってきました。40代前半でのスイング改造もそう。米国でマスターズを生で見て、いまの打ち方では飛距離が伸びない、一つの上のステージに上がるには球筋を変える必要があると思い知らされた。改造には結局6、7年もかかったけど、これが間違いなくいまにつながっていますね。

【中嶋】確かにプロというのは日々、技術へのチャレンジだね。加えて大事なのが、技術を身体で表現するための「探究心」。さらに失敗や成功を知識へと変える「知識化力」。それらが合わさって、プロの技を表現できる。

【室田】さすがに中嶋さんはうまいこと言いますね。僕はとにかく試合に出て、自分の持っているものを出し切る。そんな感覚でプレーを続けています。