PDCAを回し続け
営業の精度を高める

営業のアウトソーシングというと、営業代行サービスを想像する人は少なくないだろう。

例えば従来のテレマーケティングでは、発注企業から提供されたリストに基づいて、ローラー的に電話をかけ、アポイントメントを取り付ける方法が一般的だ。確かにこれも有効ではあるが、量に頼ったアプローチは結果につながりにくい面もある。

「また、アポイントメントを取った相手に決裁権がなければ、その後のステップは長引く可能性が高く、受注の見込みも不確定です。経営者が考えるべきは、アポイントメント獲得までのコストではなく、受注に至るまでの全体的なコスト。効果的な営業を行うには、決裁権を持つキーパーソンを見極め、相手の欲しい情報を的確に提供し、関係を深めていく必要があるのです」


ターゲット精度を向上させるPhase1、クオリティをコントロールするPhase2、Win精度を把握するPhase3。すべてのPhaseを一貫したPDCAとしてとらえ、リードストラテジーを構築。受注や契約といった成果につなげていく。

そのためのプロセスを表したのが図2だ。まずは、「ターゲット精度」を向上させる第1段階。各社の製品・サービスの特性を見ながら、競争優位の源泉を確認、統計学的なアプローチで既存顧客データを分析、ユニークポイントを明確化し、ターゲットを設定する。ここで求められるのは、コンサルティング的な要素である。

続く第2段階では、独自のフレームワークにより、クオリティ精度をコントロールする。受注をゴールとしたアポイント取得過程にKPIを設定、BANT条件と行動科学を組み合わせたKPIフレームワークを導入し、コール実績を分析する。さらに、営業訪問情報のフィードバックなどから再定義を行うことで、アポイント精度のばらつきを標準偏差10%以内にすることによりクオリティをコントロールする。

このようにリードストラテジーを活用し、ターゲット設定から受注までを1つのPDCAサイクルとしてとらえ、質と量の均一化を図ることにより、営業プロセス全体の最適化を促し、営業生産性の向上につなげることが、戦略的アウトソーシング活用の本質ではないだろうか。

受注、契約につながる
営業システムを構築

三島毅彦●みしま・たけひこ (株)エムアンドアイ
代表取締役 CEO

大学卒業後、大手コンサルティング会社でBPRを主としたコンサルティング業務に従事。2009年、エムアンドアイを設立。社団法人 日本セールスソリューションパートナー協会 理事。

営業プロセスのリード部分に焦点をあて、分析とフレームワークを駆使した戦略的なアウトソーシングを提供するエムアンドアイ。その設立の背景には、多くの企業が抱える差し迫った課題があったと三島氏は言う。

「営業というのはブラックボックス的なところがあり、経営層がその問題点を突き止めるのはなかなか難しい。だから、結果が出ない状況が続くと、どうしても価格競争や人海戦術に陥ってしまいがちです。そうではなくて、営業、特にその入り口の部分にロジックを持ち込みましょうというのが私たちの提案です。高い精度でキーパーソンに出会える手法を確立すれば、社内の営業担当の方たちは、コア業務に集中でき、これまでより成果につながる活動に注力できるに違いありません」

見込み顧客へのアプローチという営業プロセスの一部を担うアウトソーシングであっても、発注サイドの企業の最終目標である受注を見据えた戦略が欠かせない。目指すは単なるアポイントメントの獲得ではなく、受注につながる“営業システムの構築”。エムアンドアイではそんな思想をもとに、営業プロセスの全体最適化を意識したサービスを提供しているという。

企業の差別化の源泉として、いっそうの戦略性が求められるようになった営業活動。その競争優位をいかに実現するか、あらためて真剣に考えてみる必要がありそうだ。