パートナーシップで
強い競争力を築く

──では企業経営者としては、何から着手すべきだとお考えですか。

【角井】まず「勉強してください」と言いたいですね(笑)。商品開発や販売戦略などに比べ、物流やロジスティクスに対する経営者の理解はまだまだ浅い気がします。実際に他社の事例などを知れば、「なぜ物流で利益率に差が出るのか」、だんだんと分かってきます。物流戦略を後回しにしてしまうと、コストや販売価格に差が出てきて、ボディブローのように企業経営に徐々にダメージを与えるようになります。

あと大事なのは、戦略物流では「戦略」─「戦術」─「戦闘」の各レイヤーを、整合的にしっかり管理することです(下図参照)。ある衣料専門店チェーンは、特定地域でトップシェアを目指すとき、まず24時間稼働の大型物流センターを開設しました。これで配送頻度を上げ、店舗在庫を削減。狭い店舗物件でも出店可能とすることで出店攻勢を実現したのです。まずトップシェアを獲るという戦略があって、物流センターや店舗オペレーションなどの戦術、戦闘へとつなげていく。このように企業戦略と物流現場を連携し、外部のパートナーとも協調した取り組みが、戦略物流の真骨頂だと私は考えています。

──最近話題の「エコシステム」的な協働関係ですね。

【角井】そのとおりです。ロジスティクスはサプライチェーンの重要な要素ですから、外部のパートナーと有機的に連携してこそ、真価が発揮できます。物流事業者の知恵も積極的に取り込み、パートナー企業群とともに高い競争力を築いていく。消費者や利用者に付加価値をもたらす仕組みづくりこそ、経営陣の仕事ではないでしょうか。