「エネルギー政策に奇策はない」──。

今年2月25日、国は新しい「エネルギー基本計画」の政府原案を示し、日本のエネルギー需給のあり方を改善していくための方向性を打ち出した。

輸入する化石燃料への依存度の高まりや資源価格の高騰、欧米諸国に比べて低いエネルギー自給率、増加する温室効果ガス……。現状の日本のエネルギー需給構造は、ときに経済成長を妨げ、社会生活にも影響を及ぼしかねないリスクをはらんでいる。東日本大震災後にエネルギー需給が混乱し、工場での生産活動や市民生活に制約が生じたことは記憶に新しい。

災害や国際情勢に左右されにくい安定したエネルギー供給体制の確立は、言うまでもなく、日本が取り組むべき喫緊の課題である。政府原案はその一歩として、「石炭火力や天然ガス火力の発電効率の向上」「国産資源の開発の促進」「徹底した省エネルギー社会の実現」などを掲げた。

全国で広がる
エネルギーの地産地消

中でも期待がかかるのが、分散型エネルギーシステムの構築である。大規模集中発電のリスクが明らかになった今、地域の環境を生かして、自分たちが使う電気や熱を自分たちでまかなう“エネルギーの地産地消”を進める動きが広がっている。

企業や家庭というエネルギーの消費者(コンシューマー)が、熱や電気などを創り出す生産消費者(プロシューマー)へ変われば、それだけエネルギーの供給網に多様性が生まれることになる。災害などによって大規模電源からの送電がストップしても、地域単位で使える独自のエネルギー源を確保しておけば、有事にも機動的に対応できるだろう。この発想は、企業のBCP(Business Continuity Plan)においても有用だ。さらに、生産地と消費地が隣接していれば送電などに伴うエネルギーロスが生まれにくいというメリットも生じる。

固定価格買取制度も追い風になって、再生可能エネルギーは導入が加速している。最も普及が進んでいるのが、太陽光発電だ。ほかの再生可能エネルギーに比べて設置のハードルが低いため、一般家庭でも取り入れる世帯が増加。普及に伴い、設置コストは下落傾向にある。このほか、街路樹の剪定材や工場の廃材など地域の未利用木材をエネルギー源にする木質バイオマス発電は、地域活性化に役立つとして技術革新に期待がかかる。

エネルギーを無駄にせず、電気や熱を有効活用していく視点も求められるだろう。出力が不安定な再生可能エネルギーを最大限活用するには、蓄電池の技術革新なども欠かせない。また、ガスなどにより発電を行い、そこで発生した熱を冷暖房や給湯に生かすコージェネレーションシステムもエネルギー効率を高めるのに有効だ。すでに実用化も進んでいる。

分散型エネルギーシステムが身近なものになる日は、遠くない。エネルギーマネジメントを考える際、地域や一般企業がどんな役割を果たすのか。真剣に考えるべき時期ではないだろうか。