「成功体験」の積み重ねが
長期投資を継続するコツ

インフレが急速に進むなか、預金金利が物価上昇率を上回らなければお金の価値は目減りすると考えられる。「日銀は当面、金融緩和の継続を判断しています。当分の間は低金利が続くでしょう」と岡村氏は見る。

「たとえ年3%でもお金の実質価値が下がり続ければ、30年後には価値は半減します。そうなってから慌てても手遅れ。たちまちに現金が必要なリタイア世代なら無理に投資する必要はありませんが、若い世代ならこれからは円だけに偏らず、外貨建ての資産を一定割合、ポートフォリオに取り入れていくことも検討すべきです。幸い、現在は投資ツールが多様化し、海外のさまざまな資産へのアクセスが容易になっています。低い手数料で、世界主要国の株式市場に投資したのと同じ効果を得られる投資信託も登場しています。ぜひ活用していただきたいですね」

こう岡村氏が話すのも、「現在の円安インフレ局面は一時的なものではなく、世界経済の構造的な要因による長期的なトレンド」と見るからだ。

「長期的な世界経済と言われてもピンとこないかもしれませんが、20年後に自分や子供は何歳なのか当てはめて考えてみると、リアルに想像できますよ」

例えば現在30代なら、20年後には子供が成人し、本人は退職間近という人がほとんどだろう。その頃には、世界経済の主役は現在の新興国に移っている可能性も。外貨建て資産を持つことは、自分や子供の未来を考えるうえで一つのリスクヘッジとなる。一方、国内でインフレが進行し続けていれば、老後資金や教育資金の確保が一層深刻になるとのシナリオもありうる。

「そこで未来が不安だと嘆いても始まりません。夫婦2人で生涯3000万円の不足が生じると予測できるなら、逆算して月5万円を20年間、年率何%で運用すればいい──などと考えれば、具体的な目標が見えます」

目標に向かって、小さな成功を積み重ねていくこと。それこそが、インフレにも負けない資産形成の基本と言えそうだ。