「勝ち」にこだわって
「負け」からも学ぶ

──選手、監督としてキャリアを築いてきたお2人です。さらなる前進、成長のために何が必要だと思われますか。

【清宮】やはりリーダーとしてオリジナリティを磨くことですね。自分がいることで、目の前の「人」と「場」を変えていく。それを丁寧にやり続ける。人が変われば、組織も、進む道も変わっていきます。勝つ喜びや嬉し涙とか、それを与えることができるのは自分しかいない、と。“この人でなければ”という存在感。そこに清宮という人間の価値があると思っています。

【渡辺】本当にそうですね。早稲田大学の創設者、大隈重信先生は「停滞は死滅である」と言っています。「いまのやり方でいいのか」「もっと違う方法はないのか」。それを考えるだけでなく、行動に移すことが大事。今年は先に述べた意識改革のほか、大迫傑選手とともに米国陸上界のトップチームへ短期留学しました。そこでは科学的手法を積極的に取り入れている。量から質へ。日本陸上界も新たな指導法に切り替える時期かもしれません。早稲田の監督としてはチームの優勝とともに、世界で活躍できる長距離ランナーを育成する使命も感じています。

【清宮】そうだね。あとは「勝つ」という結果を着実に出していくこと。プロセスも大事だけど、世の中には「プロセスはいいけど、結果が出ない」ということが山ほどあるから。結果の積み重ねこそが、自分自身を前進させる力になる。他方でリーダーというのは、「負け」からいかに学べるか。これも不可欠な資質。僕は基本的に負けても落ち込みません。落ち込めば次に勝てるのならいくらでも落ち込みますが、そんなことはないですからね。負け試合からヒントを見つけて、別の手段、アプローチを考えていく。そうすることでしか、次のステップには進めない。

【渡辺】確かに。負の連鎖という言葉がありますが、これに一度はまるとなかなか浮上できない。そうならないためには、ポジティブさも絶対に必要です。危機をバネにして一歩踏み出せるかどうか。そこに分かれ目がある。私の理想は、監督が細かく指示しなくても動いていくチーム。例えば野球のような。個人競技ではなかなか難しいことですが、これが陸上界でできたらすごい。やってみたいですね。

──最後に、将来の夢をお願いします。

【清宮】2019年には日本でラクビーワールドカップが開催されます。ラグビーにかかわる者として、日本に新たなラクビーブームを巻き起こしたい。子供たちにスポーツの楽しみを伝え、日本をもっと元気にするために、自分に何ができるのか。それを考え、挑戦していくのも今後の楽しみの1つです。

【渡辺】その翌年の2020年は東京オリンピックです。私はできれば、メダルをとれるランナーを育ててみたい。もっともその前に、目前の箱根駅伝で勝たなくてはいけませんね。監督として、全力を尽くします。

【清宮】ぜひ頑張って。最高のレースを期待しているよ。

取材場所:ホテル椿山荘東京