「私が最も重視しているのは“理念の共有”」。そう話すのは、ダンロップブランドなどのタイヤを主力製品とする住友ゴム工業の池田育嗣社長だ。その考えを具現化するため、社員に対しても自らの“思い”をストレートに語る。持続可能な社会の実現に貢献するため、「私たちは何をすべきか」「あなたの役割は何か」。2020年を目標に、住友ゴムグループが目指すビジョンは、真のグローバルプレーヤーだ。

住友ゴム工業
1909年創業。「ダンロップ」「ファルケン」などのブランドで知られるタイヤ事業のほか、医療用精密ゴムなどの産業品事業を展開。2012年に「VISION 2020」を発表。新興国でのタイヤ生産・販売拠点の拡充や「4Dナノデザイン」などの技術革新を進めている。

池田育嗣●いけだ・いくじ
1956年生まれ。79年京都大学工学部卒業後、住友ゴム工業入社。2000年タイヤ生産技術部長、03年執行役員、10年取締役専務執行役員などを経て、11年3月より現職。

現在当社が進めている海外での新工場や拠点の設立。それについて、多くの方から「すごいスピードですね」という声をいただいています。しかし今のところ、すべてスケジュールどおり。新長期ビジョン「VISION 2020」で提示した、2012年度から2020年度までの間に、製造拠点7カ所、販売拠点7カ所の増設、また売上高は1.7倍、営業利益は2.2倍へ──。「高収益・高成長の真のグローバルプレーヤー」を目指し、全社員一丸となって取り組んでいます。成長エンジンは「新市場への挑戦」「飽くなき技術革新」「新分野の創出」の3つ。前述した海外拠点の拡充は「新市場への挑戦」、特に新興国を対象としています。

というのも、2020年のタイヤ市場は日米欧以外が54%を占めると予想しています。そこで当社では中南米、ロシア、中近東、インド、アフリカでの販売拡大戦略を策定。目標達成へ向け、意思決定と行動をより迅速化させて取り組んでいるのです。

例えば、ブラジルの新工場はこの10月から生産開始、トルコでは今秋から工場建設にかかります。また今年5月に南アフリカのタイヤ会社の買収を発表。アフリカ全土への販売拡大と生産増強を進めています。私も現地へ行きましたが、アフリカのモータリゼーションの伸びは目を見張るばかり。生産設備を革新すれば、ダンロップタイヤはまだまだ成長の可能性があります。またインドでは販売会社を設立し、今年4月にファルケンブランドの販売を開始しました。新興国での需要の伸びは、今後も加速していくはず。“常に前倒しで動く”のが私たちの流儀。スピード感をもって挑戦していく考えです。