──それでも、スポーツ、また人生にもスランプや不調が必ず訪れます。どう対処したらいいでしょう。

【中嶋】僕は、これまで3回大きなスランプを経験している。一番長くきつかったのが40代のとき。父親が亡くなったこともあって、「一体何のためにゴルフしているんだろう」と。あと年齢による変化もあり、狙ったところにボールが飛ばない。「こんな俺は俺じゃない!」と自己否定していた。他人に責任転嫁もした。だけどあることがきっかけで、そんな自分を丸ごと受け入れようと決めたんだ。するとスランプは逆にチャンスに見えてきた。これをきっかけに“新たな自分に出会える”のではないか、と。それで状況が一変したね。

【藤田】自分はあまりスランプを意識するタイプではないんですが、もちろん調子の波はあります。練習ラウンドでは絶好調、試合でも前半はバシバシいくんだけど、後半まったくダメになるとか。シーズンを通しても、大小さまざまな波がある。そんなとき意識しているのは、「軸をぶらさない」ことです。不安になると“新しい材料”を取り入れたくなりがちですが、それよりこれまで積み上げてきたものを大事にする。そのなかで、不調の出口を見つけることが多いように思います。

一歩踏み出すために
大切にしていることは

──現在の若手の活躍については、どう見ていますか。

【藤田】松山英樹選手も石川遼選手も、期待や注目を糧にして、しっかり頑張っている。ただ、若手全体についていえば、もっと海外で活躍する選手が出てきてほしいですね。「ベテランVS若手」というのは、日本国内だけの視点。海外の大会に行くと、他国の20代の選手はとても元気ですよ。

【中嶋】だからといって、まだ道を譲る気はないけどね(笑)。行くなら僕らを乗り越えて行け、と。若手らが30人くらい海外ツアーに参加するようになると盛り上がる。現状に満足せず、もっと前に踏み出せと言いたい。

──「現状に満足しない」。お二人はその姿勢を保ち続けるために、何か心がけていることはありますか。

【中嶋】僕は意外と冒険心が強くてね。やろうかやめようか、と迷ったときは、トライするタイプなんです。モチベーションをアップさせるために、いつも新たなチャレンジをするし、夢も持つようにしている。例えば「もう一回、マスターズに出場するぞ」とかね。あとは、“楽しむ”ことも大切。苦しい場面でも、それを楽しんでしまう。せっかくだから、普段できないことをしてみたり──。

【藤田】自分の場合は、目の前の目標を一つ一つクリアすること。これを大切にしています。一勝、一勝の積み重ねが、結果として賞金王となり、海外メジャーへとつながっていく。あまり遠くを見てしまうと、漠然としたイメージしか描けなくて、「今やるべきこと」が分からなくなってしまうんです。

【中嶋】ところで、そろそろ秋のシーズンも本格化してきて、11月に開催する「三井住友VISA太平洋マスターズ」も近づいてきた。個人的には、ぜひ4度目の優勝を狙いたいね。

【藤田】僕も、「今年こそは」という気持ちで臨みたいと思います。

【中嶋】最終日、一緒に最終組で回れるよう、お互いに、いっそ、もっと、輝こう。

(撮影/宍戸ヒルズカントリークラブ)