「女は課長止まり」「子会社より絶対的に親会社が偉い」……。どこにも明文化されていないのに、組織に根を下ろした暗黙のルール、不文律。成長の妨げになることもしばしばだが、どう対応していけばよいのだろう?

どこにも書かれていない暗黙の了解

「不文律」とは成文化されていない、つまり公式に書かれていないルールのこと。例えば「この部署に異動すると実は左遷を意味する」「女性は出世しても課長止まり」など、社内規定や文書のどこにも書かれていないが、暗黙の了解のごとく組織の中で決まっている事柄だ。多くの企業で、不文律は捉えどころがなく、対処の仕方もわからない、との声がよく聞かれる。しかしいわゆる企業風土ほどの曖昧さはないので把握は可能だし、打つ手はある。

不文律がすべて悪いとは言い切れない。普段は無害のものもあるし、むしろプラスに作用することもある。例えば、ソリューション営業を喧伝する営業組織で「足で稼いで数字を出した者が偉い」という不文律があったとしよう。足で稼ぐ営業がモノをいう商品もそれなりに主力であるような場合は、この不文律はプラスに働くだろう。

ただし近頃、不文律が障害となるケースが増えているのは確かだ。一因は、時代がボトムアップ型からトップダウン型に変わってきたことにある。現場に仕事のやりがいを持たせるだけでうまく回る時代はよかったのだが、今は経営者がビジョンと戦略を明確に示さないと生き残れない時代に入ってしまった。最近の電機メーカーに見られるようにトップの投資戦略1つで生き死にが決まってしまうのだ。

が、トップのビジョンや戦略の多くは現場の不文律を踏まえているわけではない。何かを変えようとするとき、不文律は急に壁となって立ちはだかる。例えばトップが「女性を積極的に抜擢せよ」と宣言しても、組織に「女性は課長止まり」という不文律が存在すると大きな障害となってしまう。そういった組織で、女性活用と言われても管理職はピンとこないため、ほとんど進まない。経営と現場の意識ギャップがさらに大きくなってしまうだけだ。