鉄道模型の市場規模に匹敵

「ずっと、いっしょ。いつでも、いっしょ」(コスプレイヤー=あかね 撮影=筆者)」

秋葉原でときどき見かけるバイオリンケースを持つ人たち。そのケースの中身は、バイオリンではなく、「ドール」と呼ばれる60cmほどの大きさの精巧な人形です。秋葉原には、ドール用にミニサイズのフードメニューを提供するメイドカフェがあり、ケースに入れて連れてきたドールと一緒に食事を楽しむことができます。ドールの撮影用ジオラマや交流イベントを提供する店舗もあり、ドール好きの人たちは、そこで写真撮影を楽しみ、情報交換をしています。

「ドール」は、全体が同じ素材でできている「フィギュア」と異なり、毛髪が植毛、あるいは着脱式になっていて、布でできた衣服を着せ換えることができ、体の関節を動かすことによって、人間のようにいろんなポーズを取らせることができます。かつてのドールは、磁器を素材とした高価なものか、子供用の玩具しかありませんでした。そのような中で今から15年前に、精巧な組み立て式模型を少数生産していた日本の模型メーカーが、その製造技術を活かして大人の女性向け商品として開発し、販売したものが、今の趣味文化としてのドールの始まりでした。ドールは、今や市場規模が約140億円と、鉄道模型の市場規模とほぼ同じ程度まで成長した趣味文化ですが、その歴史はそれほど古くはありません。

もともと女性が中心だったドール愛好家も、最近では男性の愛好家が増えています。1体5万円以上が相場のドールですが、楽しみ方が男性と女性とでは異なるので、商品も自ずと異なってきます。男性は、ドールに対して「理想の恋人」、つまり他者に対する目線を持つ人が多い。それに対して、女性は「理想の自分」、つまり自己に対する目線があります。

そんなドール愛好家なら誰もが知っている会社が、葛飾にあります。