アイドルも困惑。観客席の「不思議な人」

「私らしく、いきましょ」(コスプレイヤー=白幡いちほ[少女ジャンプ—ズ]、撮影=筆者)」

前回(http://president.jp/articles/-/9798)紹介した秋葉原でのアイドルのライブイベントでは、会場の最前列で奇妙なパフォーマンスをする集団が見られます。「オタ芸」と呼ばれるそのパフォーマンスは、アイドルの歌に合わせて両腕を思いっきり広げて振り回すなど、動作が大きく激しい振り付けが特徴です。

オタ芸とは「アイドルオタクの芸」、つまりアイドルのファンがライブ会場で行う応援パフォーマンスです。しかしそれは、1980年前後のアイドルブーム期に見られた「親衛隊」と呼ばれる熱狂的なアイドルファンとは、応援スタイルも目的も違っています。かつてのアイドルの親衛隊は、お目当てのアイドルの曲に合わせて、一斉に声援を送るというパターンが多かったのですが、オタ芸パフォーマーたちは、指を突き出して振り回したり、拍手をしながらくるくる回ったり、奇声をあげてジャンプしたりといろいろな基本技を合わせた激しい動きを、まるでステージ上のアイドルには目もくれない様子で披露します。たまにアイドルの歌声に被せるように雄叫びをあげることもあります。

当然、最初はアイドルたちにもこのパフォーマンスの意味が分かりませんでした。5年前に、私があるアイドルイベントを開催した時、ステージを終えたばかりのアイドルが、「カニのような動きをしていた不思議な人がいた」と困惑した様子で私に訴えてきたこともありました。あるいは、ステージに背を向けて自分たちのパフォーマンスに集中する集団に、私の歌に興味がないのかと不満を漏らすアイドルもいました。オタ芸パフォーマーの動作が可笑しくて笑ってしまい、そのままステージ上で歌えなくなったアイドルもいました。数年前までは、オタ芸は単なる迷惑行為として、ライブイベントから締め出されたこともありました。

しかし、アイドルたちはオタ芸パフォーマーの目的を徐々に理解するようになってきました。そして、オタ芸パフォーマーたちの間にも変化が始まったのです。