繰り返しのテクニック
私たちが宣伝する目的は、心をつかんで商品などの認知を広め、最終的には購入など「行動を起こしてもらう」ことにある。
たとえば「宣伝がうまかった」人間に、ナチスドイツの宣伝相ゲッペルスがあげられる。彼らが行ったのは戦時中のプロパガンダであり、一義的な論理展開による「真理の押しつけ」の様相を呈する。だからそのまま鵜呑みにはできないだろうし、今の情報双方向時代には相反する(まあ、逆に情報化社会だからこそ、ネットなど介して行われているともいえるかもしれないけれど……)。ともあれ、プロパガンダを持ち上げるわけではなく、その伝え方のコツだけは真似て「応用」する価値はある。
彼は「大衆は、もっとも馴れ親しんでいる情報を真実と呼ぶ」という考えに基づいて、イメージやスローガンを繰り返すことに力を注いでいた。しかも、誰にでもわかりやすい言葉で、だ。
話をする際に、その中で一番話がわからなそうな人物を想定し、その人物が理解できるような表現に噛み砕いたそうだ。たとえば、子どもにわかるなら、おおよその大人は理解する。もちろん、幼児語を使ったり、まるでひらがなだけで話したりするようなイメージではない。つまりは、インパクトのある一言を伝えたら、誰でもわかるよう言葉で噛み砕いた説明を加えて理解させ、受け入れてもらうということだ。
たとえば、人に界面活性剤の働きを伝えるならば、「界面活性剤の『乳化分散作用』により汚れが精練液中に安定に分散する」と表現するよりも、「界面活性剤は汚れを分解する、つまり“汚れが落ちる”」と表現したほうが、頭にスッと入ってくる。