「そのうちね」「またいずれ」を言わせない方法

成熟市場におけるクロージングは一筋縄ではいかない。成熟市場では顧客の基本ニーズが満たされているため、いますぐ競合から切り替える必然性が薄い。そのため満足のいく提案でも、「悪くないけど、そのうちね」と先延ばしにされるケースが多いのだ。

ここでやってはいけないのが、強引に契約を迫る行為。顧客から完全に断られたわけではないので、営業担当者としては、ついプッシュ型のクロージングをしてしまう。しかし、たいていはこれが裏目に出て、顧客を怒らせることになる。

そもそもクロージングとは、顧客に契約を迫って首を縦に振らせることではない。私たちは、クロージングを「顧客とスケジュールを共有し、リードしていくこと」と定義している。顧客は営業プロセスに関して時間の概念がない。そのままでは「またいずれ」が延々と続きかねないので、顧客と時間軸を共有して、それに沿ってアクションを起こすように促していく。そうすれば強引に契約を迫らなくても、商談は収まるところに収まっていく。それがクロージングの理想形だ。

顧客に時間軸を意識させる手法は2つある。1つ目は「ステップクロージング」だ。営業プロセスは、基本的に小さなステップの積み重ね。成約という大きなステップも、それまでの小さなステップの延長線上にある。そこでステップごとにしっかりクロージング(約束)を行い、成約というステップについてもクロージングの意識を持ってもらうのだ。具体的には、訪問のたびに時間を区切った何らかの約束を顧客と交わすといい。

「次回訪問の1週間後までに、見積もりに必要な資料を用意しておいていただけますか」

こうして毎回小さな約束を交わしていくと、顧客は営業担当者に対して「時間を重視する人だ」という印象を抱くだろう。そうなれば受注に向けたクロージングの場面でも、時間を曖昧にした返事をされる確率はグンと減るはずだ。