彼女がテレビを買い替えたいと言うから(補足説明)、一緒に家電量販店に行った。売り場にはたくさんのテレビが置いてあって、画面ではコブクロのライブ映像が流れていた(補足説明)。熱唱するコブクロに見とれる彼女(脚色)。声量と性欲を間違えた(削除)彼女が「すごい性欲だね」。店員が思わず2度見!(脚色)。

つまりオチの「結」を際立たせるため、フリの「起承転」を丁寧につくり込んでいくわけだが、これはウケる話に限った手順ではない。営業にとってある商品を売ることや経営企画部門にとって経営戦略の採用をオチとするなら、そのゴールに向けてのプレゼンであったり、コミュニケーションはフリに当たる。そこでは起承転結に沿って筋道を立てること、自分なりの感情を入れること、脚色や不要な部分の削除などを無意識に取り組んでいるはずだ。ウケる話も同じように、目的に向けて逆算していけばいい。

話ができあがったら、次に考えるべきなのは、場の空気である。自分で話しやすい空気をつくることは、その場の中で自分が一番上のポジションにいないかぎりなかなか難しい。だから、その場の空気に合わせて動くことがセオリーになる。

たとえば誰かが「今日すごく暑いよね」と話を始めて、その話題がつながっていったとしよう。そこで、

×「ちょっと聞いてくださいよ! こないだ家電量販店に彼女と行って……」

と切り出せば、「それって今話す必要ある?」と周囲は当惑するだろう。しかし、そこで、

「暑いといえば最近、店の中って冷房効いてないですよね。そういえば、こないだ彼女と家電量販店に行ったとき……」

と、つなぎのフレーズを入れれば、話の中身は暑さと全然関係なくても、さもスムーズに展開した印象を与えることができる。結果、人が話を聞く空気の中で、用意していたトークで勝負できるのだ。