人の好き嫌いというのは、アメリカの心理学者カニンガムによれば、食物のアレルギー反応と同じです。嫌いの度が飽和点に達しアレルギー反応が完全に構成されてしまうと、たとえ相手が客観的にはどんなに優れた人物でも、我慢できない状態になります。

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「好き嫌い」はアレルギーと同じ

牛乳アレルギーの人に、いくら「栄養があるから」と勧めてもありがた迷惑でしかないのと同じ。食物アレルギーに対して、人へのアレルギーのほうは社会的アレルギーと呼んでいます。

したがって、嫌いな人間を好きになるには、このアレルギー反応が起きる前に手を打たなければなりません。その段階で、「汝の敵を愛せ」を実行すること。

そのための具体策は、まず相手の「良いところ探し」です。「わがままで嫌なヤツだな」と思ったなら、「自己主張ができるタイプなんだ。羨ましい」と考えてみる。あるいは、なんでもいいから褒める対象を見つけ、できれば口に出す。自分から心を開いて接すれば、相手の対応も変化するはずです。

良いところがなかなか発見できないときは、とにかく自分との共通点を見つけること。僕は以前、ルー大柴というタレントが大嫌いだったのですが、テレビでルーさんが「僕は多摩川でドジョウを捕まえたりするんですよ」と喋っているのを聞いた瞬間、「あ、いいヤツじゃん」と思い、それ以来気にならなくなりました。僕も昆虫や魚が好きなので。接点のある人間に対しては、心理的に嫌悪感が減るのです。

米国ニューヨーク州立大学のリー・ウェストマース博士は「自分との共通点が多いほど相手が好きになり、魅力的に見え、共感しやすくなり、サポートしたい気持ちになる」という研究報告を発表しています。

苦手だと思う仕事相手でも、出身地や趣味、関心のあるスポーツ、収集品、家族構成、子供時代に見たテレビ番組、懐かしい歌や社会的大事件の記憶……なんでもいいので1つでも2つでも共通点を見つけることです。

次にやるべきことは、接触を増やして、とにかく慣れてしまうこと。心理学にはコンタクト仮説と呼ばれるものがあります。これは、強い刺激もコンタクトを増やすことによって慣れてしまうということ。「美女も3日で飽き、ブスは3日で慣れる」という言葉どおりなのです。

だから、嫌いな相手にはむしろ積極的に接触する。会話をするのが第一歩ですが、できれば一緒に行動してみること。