大手スーパーが右に倣えと食料品や日用品の値下げに動くなど、個人消費をめぐる現場は値下げのオンパレードだ。12月16日の衆院選で大勝した自民党が「政権公約」に掲げたインフレターゲット(物価目標)を「実需が伴わない空論」(経済団体幹部)とあざ笑うように、小売り・外食各社は「価格破壊」を飛び越え、「価格崩壊」に一直線に突き進んでいる。

国内家具最大手のニトリは11月末、867品目の価格を10~40%の幅で引き下げた。同社がこれだけ大がかりな値下げに踏み切るのは、2010年10月以来、ほぼ2年ぶりだ。「国民の役に立っていればデフレは悪くない」。似鳥昭雄社長は、所得環境悪化に歯止めがかからない現状で、一方的に物価上昇目標を掲げる政策を疑問視する。

小売業の値下げは、ニトリに限らない。鈍い個人消費を刺激しようと、イオン、ダイエー、西友などの大手スーパーは、すでに値下げ競争の真っ只中だ。秋以降、景気後退局面入りが濃厚になってきたことから、価格競争は一段と激化している。大手スーパーで“孤高”の値下げ慎重派・イトーヨーカ堂も売り上げ低迷で背に腹は代えられず、12月1日に食料品、日用品約1000品目の価格を10~40%引き下げ、値下げ合戦に参戦した。

値下げ競争が沈静化していた牛丼チェーンも、吉野家ホールディングスが運営する「吉野家」が牛丼並盛りを業界最安値250円で提供する新業態を出店したのを受け、最大手「すき家」を展開するゼンショーホールディングスは、12年4月以来の値下げキャンペーンを12月初めに実施し、値下げ競争が再燃しかねない。ファストファッションも、ユニクロが看板商品の発熱保温肌着「ヒートテック」の価格を、昨シーズンから1~3割引き下げるなど、小売り・外食の現場はデフレモードに染まったままだ。

売り上げ低迷の中での値下げ合戦は、お互いの体力を消耗させる。しかし、冬のボーナスは前年を割り込み、企業の大量人員削減計画が相次ぎ、来春闘で賃金改善要求を見送る労組も出るなど、悪化する一方の所得環境に、小売りの現場は低価格を訴えるよりない。実需につなげ、消費を上向かせる保証もない金融政策に頼ったインフレターゲットに、小売りの現場からは「脱デフレはほど遠い」「安倍晋三・自民党総裁の一人芝居」と冷ややかな声も漏れ聞こえてくる。