人びとはどのサービスをどの程度利用し、その傾向は年々どのように推移しているのか――。プレジデントオンライン編集部がビデオリサーチ社と共同でお届け する本連載。首都圏の消費者を「お金持ち」層(マル金、年収1000万円以上)、「中流」層(マル中、年収500万円以上から1000万円未満)、「庶民」層(マル庶、年収500万円未満)という3ゾーンに区切り、生活動態の分析を試みている。今回からは、郊外・都心を問わず次々に登場する複合商業施設 を検証していく。


 

図を拡大
買い物意識「あちこちの店を見て歩くのが好き」

大型複合商業施設が生き残るには、いくつかの決定的な勝ちの要素が必要だ。

まず「リアル・ショッピング」が「ネット・ショッピング」よりも楽しいという勝ちの要素が必要だと、マーケティングコンサルタントの西川りゅうじん氏は説く。

「今やネットでたいていのモノが買える時代になりました。しかも交通費もかからず、暑い夏も寒い冬も雨の日でも気軽に買え、さらにリアルの店舗で買うよりも安い場合もあります。ですから、リアル・ショッピングならではの楽しさ、“ショッピング・エンターテインメント”が求められるのです。お天気が気持ちいいとか、ウィンドウをながめていると気分がアガる、実際に服に触れてみることで質感が伝わる、試着して肌触りを実感するとか、店員がマイ・スタイリストになってアドバイスをくれたり、外へ出ることで偶然の出会いがあったり……。そんなリアルでしか楽しめない非日常感こそが勝ちの要素なのです」

一方、ネット・ショッピングには、価格の比較がしやすいことや、商品に関する数多くの第三者の評価を冷静に見られて選択できるといった利点がある。

それらネットの利便性を超える、今後の大型複合商業施設が目指すべきリアル・ショッピングの勝ちの可能性を、西川氏は2つの視点から解説してくれた。

「1つは『ワンストップ・マーケティング』です。そこに行けばすべてが揃う売り場づくりですね。大規模施設がオープンすると周辺への波及効果が期待されますが、実は7割の消費者は1つの商業施設に行ったらそこから動かないんです。周囲の施設や店舗をハシゴする人は少ないんです。ついでに近くの施設や店舗を利用する人は2割しかいません。つまり、ヴィーナス・フォートに行ったからといって、同じお台場でもダイバーシティにはほとんど行かないわけです」

西川氏によれば、「ワンストップ・マーケティング」も進化を遂げているのだそうだ。

従来型の「ワンストップ・マーケティング」の例として「山ガール」のコーナーが挙げられる。それまでは、登山に必要な、登山靴、リュック、帽子、衣類、靴下、コンパス、書籍などがバラバラの売場で売られていましたが、「山ガール」のコーナーに行けば、すべて必要なモノをすべて揃えられるといった売り方だった。

ところが、最新型の「ワンストップ・マーケティング」は、そういった「山ガール」といったコンセプトやライフスタイルごとの関連する商品群を集めた売り場ではなく、一見、何の関係もなさそうなモノは「コモディティ」(日用品)というくくりで売れるのだという。

「例えば、西友では食品売り場の隣りに900円のフリースを並べて販売することで販売数が前年の倍近くになっています。新たな『ワンストップ・マーケティング』のポイントは3つです。1つはタイミングです。寒さを実感し始める時期だから売れたんです。そして、低価格。フリースも毎日の夕食の材料と同じくらいのコモディティ価格だから買物カゴに一緒に入れられるわけです。最後は主婦目線です。主婦の感覚から価格や商品をとらえることが大切です」

また、今回の大型複合商業施設の利用度のデータを見ても、『ワンストップで揃う、そして安さ』が勝ちのファクターになっているようだ。買物はファミリーにとっての休日イベントなのだという。

もう1つ、西川氏はこれからの大型複合商業施設に求められる要素を指摘する。

「それは“都市観光”の視点です。失われた20年と呼ばれた間も、全国各地で観光客が増え続けて来たところには同じ特性があります。小樽、川越、長浜の黒壁スクエア、伊勢のおかげ横丁、門司港レトロなど……といった町です。これらは街歩きが楽しめるように、1つのテーマで景観を整備してきた町ばかりです。首都圏で言えば、ディズニーリゾートや横浜の中華街、2012年にオープンしたスポットでは、創建当時の姿に復元された東京駅や東京スカイツリーの足下の東京ソラマチも1つのテーマに基づいた“都市観光”の施設だとも言えます。これからの大型複合商業施設には、そういったテーマを元に時間とともにさらに充実させていく、“進化するタウンマネージメント”が求められます。でなければ完成時がベストで、時間の経過とともに劣化して朽ち果てていくだけになってしまいます」

ネットで何でも買える時代だからこそ、リアルの施設でしか味わえない“ショッピング・エンターテインメント性”あふれる複合商業施設が生き残っていくのに違いない。

※ビデオリサーチ社が約30年に渡って実施している、生活者の媒体接触状況や消費購買状況に関する調査「ACR」(http://www.videor.co.jp/service/media/acr/)や「MCR」の調査結果を元に同社と編集部が共同で分析。同調査は一般人の生活全般に関する様々な意識調査であり、調査対象者は約8700人、調査項目数は20000以上にも及ぶ。

マーケティングコンサルタント 西川りゅうじん
「愛・地球博」の“モリゾーとキッコロ”や「平城遷都祭」の“せんとくん”の選定・広報、「六本木ヒルズ」「表参道ヒルズ」「三井本館」「コレド日本橋」「上海環球金融中心」のコンセプト立案や商業開発、「つくばエクスプレス」沿線PRに携わるなど産業と地域の元気化に努めて来た。厚生労働省「健康寿命をのばそう!」運動スーパーバイザー。瀬戸内海沿岸の7県による「瀬戸内ブランド推進協議会」プロデューサーを務める。