女性天皇・女系天皇を認めても「皇室の伝統」は守られる

この年の天皇誕生日の1カ月ほど前に、小泉純一郎内閣に設けられた有識者会議が報告書を提出していた。そこには、すでに側室制度があり得ない時代になっており、また少子化という現実もある中で、皇位の継承資格を「男系男子」に縛るというルールをいつまでも維持していては、今後たとえ皇室に男子が生まれても安定的な皇位継承は望めないので、女性天皇・女系天皇も認めるルールへの変更が「不可欠」であると明言されていた。

これを受けて、当時の宮内記者会は「(それが実現すれば)皇室の伝統の一大転換となります」と(勝手に)決めつけた上で、「皇室の伝統とその将来についてどのようにお考えになっているか」を尋ねた。それへのご回答として、憲法上の制約に配慮して政治的な問題は慎重に避けながら、「皇室の中で女性が果たしてきた役割については私は有形無形に大きなものがあったのではないかと思います」とされた上で、先のように述べられたのであった。

これは、「皇室の伝統」はとっくに過去のものになった側室制度がなければ維持できない“男系男子”継承などではなく、「国民と苦楽を共にする」という“在り方”に他ならない、というメッセージだったと理解できる。言い換えると、そのような在り方、その精神が揺るぎなく受け継がれるならば、女性天皇・女系天皇を認めても「皇室の伝統」は立派に守られる、というお考えを示されたことになる。

「直系優先」が維持されれば次の天皇は愛子さまに

そのような文脈での上皇陛下のおことばを、他でもない敬宮殿下ご自身が真正面から受け止めていらっしゃる事実は、重い。上皇陛下がおっしゃった「皇室の伝統」を受け継ぐご覚悟を、自ら示されたものと拝察できる。

もし国会で「女性天皇」を認める皇室典範の改正がなされ、これまで通り「直系優先」の原則が維持されれば、次の天皇には敬宮殿下が即位されることになる。それは、国民の間に高まっている願いとまさに合致するのではないだろうか。

そのような国民の素直な気持ちを、大衆の気まぐれとか一時的なブームなどと、上から目線で軽んじるのはいただけない。天皇陛下のお子様が即位されることは「世襲制」のもとでは当たり前だ。にもかかわらず、ただ「女性だから」というだけの理由で即位の可能性を排除している今のルールの方が、時代錯誤であり異常だろう。

対照的な国会の寒々しい光景

ところが、ここで視線を国会に向けると、そこには寒々しい光景しか目に入ってこない。

皇位継承問題は、6月23日まで開かれる予定の今の国会中に、一定の決着を見る可能性が浮上している。だがその中身は、将来の安定的な皇位継承とはまったく無縁な、目先の皇族数の減少を抑えるだけの、後ろ向きな方策にすぎない。