カゴもカバンも雨合羽もすべて自家製

――大滝さんは、山熊田のどんなところと相性が合ったのですか?

いくつかありますね。

まず1つは酒文化。マタギたちの熊狩り、田植え、稲刈り、盆踊りなど、何かあったら、村の人たちが集まって飲んでいる。みんな幼なじみで親戚でもあるから、遠慮なくワイワイやる。それが、楽しいんですよ。

もう1つ山熊田と相性がよかったと感じるのは、物づくりです。

山熊田では店がないから、何も買えない。だからみんな山にある物でつくってしまう。山菜を採りに行くときのカゴや袋も植物の蔦でつくるし、背負子やそれを担ぐ荷縄もその辺の材料で作ってしまう。

熊やテンなどの皮をなめした毛皮も自家製だし、最近まで雨合羽代わりにガマや樹皮でつくった簔も使っていました。いま私は日本三大古代布の1つで、山熊田の伝統工芸品「羽越しな布」の制作にたずさわっているのですが、旧式の機織り機も手づくりです。

山熊田の伝統工芸品「羽越しな布」
画像提供=大滝ジュンコさん
山熊田の伝統工芸品「羽越しな布」

必要な物は自分でつくる。まっとうなスタンスだと感じたし、クリエイティビティな暮らしだなと思いました。私は現代アートをやっていたから山熊田の物づくりにとてもシンパシーを感じたんです。

昔は各家で濁酒どぶろくもつくっていたそうです。

住民を見下す移住者

――やっぱり酒文化なんですね。村に飲めない人はいないんですか?

どうでしょう。病気で飲めないおじいちゃんはいるけど、歳がいっても量が減るだけで、みんな飲んでますね。(飲み過ぎで体を壊した人はいないのです、怖いことに)。

女衆も飲む人が多いですね。私が移住してから村の女衆だけの飲み会も定期的に開くようになりました。そう考えると、酒の場を楽しめない人には山熊田は厳しいかもしれません。

おちょこを持って乾杯をする人たちの手
写真=iStock.com/liebre
※写真はイメージです

山熊田がある村上市旧山北町には、小さな集落がいくつもあります。先ほど集落ごとに性格が違うと話しましたが、なかには移住者に対して過干渉かなと思う集落もある。

――「子どもはまだか?」も過干渉な気がするのですが。

確かに。問題なのは過干渉というよりも、愛のない干渉なのかもしれません。その集落から離れた山熊田に暮らす私の耳にも、移住者に対する悪口や愚痴が届くこともありますから。

私が移住者の1人として言えるのは、よそからきた人はみんな弱者ということ。他愛のない悪口や陰口、愚痴も本人にとっては、土地を離れる原因になるほどのダメージになってしまう。

一方で問題がある移住者もいるのも事実です。無意識なのかもしれませんが、あからさまに田舎を見下している人もいる。

集落を流れる山熊田川でとれたアユを焼く
画像提供=大滝ジュンコさん
集落を流れる山熊田川でとれたアユを焼く