認知症ドライバーによる事故は大きく減った

すると、まさに効果はてきめん。認知症や軽度認知機能障害の人だけでなく、「最近ちょっと怪しくなってきたな」とご自身もしくはご家族が感じるようになった人が、免許を自主返納するケースが一気に増えました。

2016年の免許返納件数が34.5万件、免許返納率が7.65%だったのに対し、2017年になって前者が42.4万件、後者が11.62%に上がったのです。

もちろん、これに連動するかたちで、認知症ドライバーによる事故は大きく減りました。

「運転脳が衰えてきている人」が事故を起こしている

これにて一件落着。となれば理想的な展開だったのでしょう。

しかし、そうは問屋が卸しません。社会の高齢化は加速度的に進んでいるので、認知症ドライバーは減っても、高齢ドライバー自体は減ることがなく(というより、むしろ増加しており)、事故も激減というわけにはいかなかったのです。

「じゃあ、誰が事故を起こしているの?」

おのずとそんな疑問がわいてきますよね。

その答えとして浮上してくるのが、「運転脳が衰えてきている人」になります。

手のひらの上に浮かぶ脳のイラスト
写真=iStock.com/mi-viri
「運転脳が衰えてきている人」が事故を起こしている(※写真はイメージです)

認知症ではなく、日常生活にとくに問題はなく、会話の受け答えも可能で、自分の言動や行動の内容をおおよそ認識できている――そういう“ごく普通の高齢者”が事故を起こしているのです。