高級ブランドが偽物を一掃しないワケ

驚いたことに、盗みの容認は高級ブランドにも恩恵をもたらす。イヴ・サンローランはハンドバッグにあの有名なロゴをプリントしている。ロレックスのすべての時計にはあの王冠マークが刻まれている。だが商標を躍起になって守ろうとするのがつねに賢明な戦略であるとは言えない。

サンローランやロレックスの偽物をタイムズスクエアのいかがわしい売り手から買う観光客は、正規販売店の売り上げを奪いはしない。むしろ彼らは若い消費者たちに、最高にクールなブランドはこれよ、と教えているのだ。そう考えれば、偽物はただでできる最高の宣伝である。

高級ブランドの偽物を買う人たちは、将来本物を買う潜在顧客との橋渡しをしていると言えるかもしれない。ある調査によると、高級ブランドの偽物を買った人の40%は、フェイクに飽き足らずにいずれ本物を買うという。別の調査によれば、偽物を容認することによって多くの高級ブランドの本物の価値は一段と高まるという。

ディズニーは初代ミッキーの著作権を延長しなかった

むやみに著作権を貯め込んでいるあのディズニー社でさえ、態度を変える可能性がある。保育園の一件(編註)は同社に平手打ちを食わせたようなものだった。ユニバーサル・スタジオが世間にもてはやされる一方で、ディズニーは厳しい批判にさらされた。これをきっかけにディズニーが所有権戦略を見直すかもしれない。

(編註)アメリカの保育園の壁に描かれたミッキーの絵を消すようにウォルト・ディズニー社が要請した件。イラストは消され、騒動を知ったユニバーサル・スタジオが代わりに別のイラストを描き、ディズニー社の攻撃的な姿勢に批判が集中した。

ミッキーマウスの著作権は2024年に失効することになっているが、いまのところディズニーは議会に再度の延長を陳情する動きを本格化していない。これはどうしたことだろうか。ロビイストに報酬を払い、何人かの議員に狙いを定めて政治献金をするほうがはるかに安上がりではなかったのか。前回の期間延長のためにディズニーは1億ドルほどを投じたと推定されるが、その何倍もの見返りを手にしたはずだ。

だがディズニーはもっとよい所有権戦略があることに気づいたらしい。著作権への依存を減らすことでより多くの利益を得る戦略、つまりHBOの盗み容認スタンスを採用することにしたのである。