認知症の症状が疑われたら、専門医の確定診断を

先ほどの事例では父親に認知症の症状も疑われるため、まずはかかりつけ医において可能な範囲で診察および検査をおこなってもらい、必要に応じて専門医による確定診断をつけてもらうことが必要でしょう。ケースバイケースですが、認知症の診断が確定すると要介護1以上の判定が出る可能性があるからです。

介護度が決まれば、担当のケアマネジャーと相談してサービスを組み立てていきます。ケアマネジャーとは自治体が認定している介護支援専門員のことです。要介護者や要支援者の相談に応じ、訪問介護、デイサービスといった介護サービス等の提供にかんする計画(ケアプラン)の作成、そして市町村・サービス事業者・介護施設等との連絡調整を担当します。

シニア男性とホームヘルパー
写真=iStock.com/byryo
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配偶者の負担を軽減するためでもある

このケースでは、まだ母親に大きな健康上の問題がなさそうなことから、まずはこれ以上、父親の状態が悪化しないよう身体機能を維持向上させるサービスが優先されるべきではないかと思います。

また、母親の負担を軽減させる意味でも、常時2人が顔を突き合わせている状況に少し変化をつけることも選択肢として考え得るでしょう。たとえば父親には、週に2回でも通所リハビリテーションを利用してもらうと、下肢筋力トレーニングはもちろんのこと、他者との人的交流による気分転換も期待できます。

それによって母親もひととき介護から解放されるというメリットもあるでしょう。その一歩を踏み出すことは、人によっては困難な場合もありますが、このまま引きこもってしまえば、事態が悪化することも危惧きぐされます。

なにより大切なのは、あなたを含め周りの人たちが、無理強いではなくできるだけ本人たちが自発的に意欲を持って前向きに意思決定できるよう、サポートしていくことです。そうすることで当事者も介護者も、それまで見出せなかった有意義な時を過ごすことができるようになるでしょう。