ストレスに応答するためのタンパク質が合成される
そして、ISRにはもう一つの働きがあります。通常のタンパク質合成が止まる代わりに、ストレスに応答するためのタンパク質が合成され、HHV-6の遺伝子にも働きかけて、再活性化を誘導、さらに、ストレスに応答するために炎症性サイトカインの産生も引き起こしているのです。
この知見をもとに、生理的疲労では「疲労感」と「疲労」の区別は次のようにまとめることができます。
疲労感……ISRによって産生された炎症性サイトカインが脳に伝わって生じる感覚
疲労……ISRを引き起こすeIF2αのリン酸化による細胞の停止や細胞死
疲労……ISRを引き起こすeIF2αのリン酸化による細胞の停止や細胞死
疲労の原因はISRと呼ばれるストレス応答であり、それを引き起こすのがeIF2αのリン酸化ということになるわけです。
うつ病を引き起こす危険因子となる遺伝子「SITH-1」
われわれは最近、うつ病を引き起こす危険因子であると考えられる遺伝子が、HHV-6が宿主の体内で潜伏感染しているときに産生されているのを発見することができました。この遺伝子をわれわれは、「SITH-1」と名づけました。
うつ病の原因として現時点も最も有力とされているのは、脳の炎症、とくにミクログリアやアストロサイトといった脳の免疫機能に関係するグリア細胞(*脳内に存在する神経細胞=ニューロン以外の細胞)での、炎症性サイトカイン産生の亢進による、という説です。
SITH-1は、HHV-6が脳のアストロサイトで潜伏感染しているときに発現している潜伏感染遺伝子です。同じ「SITH-1」という名前の、159アミノ酸からなる小さなタンパク質を産生します。