経済成長を促す減税政策が日本の問題を解決する

国民が「減税」を求める声を上げると、日本政府の借金問題と将来的な社会保障費増加の観点から減税反対・増税賛成の主張を展開する人もいる。

しかし、彼らは事実として増税を繰り返しても、政府はそれを更に使い潰して借金を重ねてきた現実を受け止めるべきだ。仮に机上の空論通りに増税を達成したとしても、政府(とそれを構成する役人)には国民負担率上昇と借金増加の原因となる社会保障費を抜本的に減少させる動機はない。むしろ、国民が増税を許容すれば喜んで更にバラマキ政策を作るだけだ。

そこで、もう一つ明らかな事実を確認したい。それは、経済成長は税収増加に繋がるということだ。たとえば、所得税収だけでも、2020年度19兆1898億円であった税収額が、2021年は21兆3822億円(2020年度比・2兆1924億円増加)、2022年度は22兆5216億円(2020年度比・3兆3318億円増加)も増収している。つまり、2020年度を基準とした場合、直近2年の所得税の合計増収分は合計5兆5242億円になる。もちろん、経済成長は所得税だけでなく、法人税、消費税、その他の税収増ももたらす。

これらの税収増は更なる減税の原資となるとともに、新たな増税を抑止するための財源となる。強力な経済成長を維持することは、国民負担率を低下させることに繋がる。それは経済成長を実現する金の卵を産むガチョウである企業と現役世代を守ることを意味する。増税は経済成長を破壊し、金の卵を産むガチョウを丸焼きにして食べる愚行である。ガチョウを殺せば借金を返済するどころの話ではない。

今こそ、日本復活に向けた最後のチャンス

その上で、社会保障の考え方を切り替えて、年金、医療、介護の自己負担率を高めていくことが重要である。まず、厚生労働省等が作成した「現状の制度がそのまま継続する」ことを前提とした議論をやめることが望ましい。筆者は厚生労働省の官僚にも年金・医療・介護の財政見通しに関してヒアリングしたことがあるが、役人には現状の制度の前提を変えることはできない。そのため、壊れた制度を継続する見通しに基づいた不毛な議論を繰り返すだけだ。

本来は政治家(と有権者)が価値観を含めた制度の前提を変える議論をすべきだ。過剰な社会保障制度は削減し、高齢者の自己負担を高めることは当然だ。ただし、高齢者にも制度変更に伴う恩恵を享受することは必要だろう。そのため、金融資産に関する減税策と組み合わせた政策を立案することが望ましい。したがって、日本が経済成長して投資利回りを改善させることで、高齢者が自らの資産を運用し、自らの老後の人生の負担を賄う社会に転換すべきだ(さらに、金融資産増税は日本経済を再びどん底に叩き落すことになる愚策となり、誰も得しない単なるルサンチマン政策であることを強調しておく)。

日本国民が置かれた状況は、今が最後の復活に向けたチャンスと言えるだろう。長い不況から抜け出た今、再び増税によって二度と立ち上がれない道に行くか、それとも減税による経済成長で正常な軌道の国に戻るのか。我々有権者の意思がそれを決めることになるのだ。

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