子どものオーナーシップを培う育て方

私は、子どもに接するときも、なるべく彼らがオーナーシップを持てるように、と考えています。子どもが提案したことは、なるべく採用したい。たとえば「ここに行ってみたい」「これを食べてみたい」といった彼らの日常のささやかな要望については、たとえ「きっとおもしろくないだろうな」「苦手だと思うけどな」と内心では思っていても、またその意見を伝えることがあっても(もちろん危険なことにはNOと言いますが)、できる限り彼らの希望を叶えます。

結果、それが子どもにとって小さな失敗を経験することになったとしても、それも含めてオーナーシップを培ってほしいからです。

自分の提案が受け入れられる体験を通して、「自分の意見は聞いてもらえる価値がある」と感じられます。そして「失敗しても、たいしたことじゃない。たいていのことは、どうにかなる」と身をもって知ることができます。

また、子どもに何かを言って聞かせるときにも、子ども自身がオーナーシップを持って決めたと自覚できるように伝えたいと意識しています。

子どもたちに遊ぶのをやめて部屋を片付けてほしいときに、大きな声でどなったら、言うことは聞くかもしれませんが、それはただ親が怒っているからやっているだけです。自分で納得して決めたことではなく、オーナーシップが発揮されたとは言えません。

他者の采配によって行動を決めざるを得ない社会

現代の社会が自尊心を後押ししてくれるような構造になっていないように、オーナーシップについても、残念ながらそれを持ちやすい社会であるとは言えないのが現状だと思います。

他者の采配によってそうせざるを得ない環境が多すぎて、仕方がないから他者の評価軸の中で評価されることをやるようになったり、上から言われたことをただこなすようになったり。

私の知り合いの女性は、子どもを出産し、育休が明けてしばらくたってから、会社から「子どももできたし、こっちの部署のほうが働きやすいでしょ」と、まったくオーナーシップを与えられない状態で異動を命じられました。彼女は、元の部署で誰よりも結果を出していたのに、です。

この部署異動が、彼女自身が「新しい部署の仕事にも興味があった」とか「働き方を変えたい」と自分で判断して提案したものであれば、それはオーナーシップを感じられる事例であったと思います。