「広報室にすら記者を入れないなんて前代未聞」――大手マスコミ記者がそうぼやくのは、今年9月19日に発足した原子力規制庁のお粗末な記者対応のこと。
原子力規制庁は、原発事故の収束と再発防止のため環境省の外局として発足した原子力規制委員会(田中俊一委員長)の事務局だ。東京・六本木の高級オフィスビルの6フロアにあり、賃貸料は実に月4346万円。職員は環境省、経産省、文科省、警察庁からの寄せ集めだが、安全・保安院からの横滑りが大半を占める。
発足直後はトラブルが頻発した。まず規制委員会人事。国会の同意が必要だが、政府が起用した田中委員長ら五委員について、与野党から“原子力ムラの住人”との批判が上がり、いまだに国会の同意を得られていない。
10月24日に規制委員会が公表した放射性物質の拡散予測(全国16カ所の原発対象。福島原発事故のような深刻な事故が起きた場合を想定)についても、その5日後に「データの入力ミスがあった」として訂正。メディア対応でも、当初、日本共産党の機関紙「赤旗」の会見出席を拒否(その後出席を了承)したりと、秘密主義的傾向が物議を醸している。
「規制庁には会見場と記者席は設けられているが、会見は田中委員長と森本英香規制庁次長の2人だけ。拡散予測の訂正のときは森本次長が夜に会見して謝罪したものの、訂正資料の配布の仕方など問題山積。拡散予測の訂正の際など、規制庁は広報課に記者を入れず“訂正します。訂正資料は記者控え室に置いておきます”というメールを記者に送ってきただけ。発表に誤りがあるなら、広報室に記者を入れて訂正資料を渡してレクチャーするのが普通でしょう」(担当記者)
防衛省など機密性の高い一部の省庁を除き、記者は原則的に自由に役所内を取材できるはず。ところが規制委員会・規制庁は各階各部屋ともロックされ、カードキーがないと広報室にすら入れない。
「原子力に関する機密資料があるためというのが入室拒否の理由だが、広報室にも入れないのは行きすぎ。広報室で直接広報担当者から話を聞きたいと頼んでも電話取材以外受け付けない。お互い資料を見ながらやりとりするほうが間違いがないはず」と担当記者は首をひねる。
規制庁長官は池田克彦前警視総監。そこで「警察流の情報管理では」とのうがった見方も出ている。