福田氏は当選4回ながら岸田政権発足直後に自民党総務会長に起用された。岸田首相には安倍派の次世代ホープである福田氏を引き込んで5人衆を牽制する狙いがあったとみられる。

福田達夫氏
福田達夫氏(写真=内閣官房内閣広報室/CC-BY-4.0)

5人衆は自分たちを飛び越える抜擢人事に不満で、福田氏を遠ざけた。今回の裏金事件で5人衆が一斉に失脚し、福田氏としては「口うるさい先輩諸氏」が一斉に消えた格好だ。創始者の孫としてそのうちに「清和会復興」を掲げ、「福田派」を旗揚げする可能性は極めて高い。

とはいえ、福田氏は父親の福田康夫元首相と同様、安倍派内ではリベラル色が強いとみられ、右寄りの安倍チルドレンとは距離がある。安倍チルドレンたちはむしろ、安倍氏が前回総裁選に無派閥ながら担ぎ出した高市早苗経済安保担当相にシンパシーがある。

高市早苗氏
高市早苗氏(写真=内閣官房内閣広報室/CC-BY-4.0)

5人衆は高市氏を警戒し、安倍氏急逝後は露骨に遠ざけてきた。高市氏は孤立感を深め、今年9月の総裁選に向けて推薦人20人を確保するための勉強会を立ち上げたものの、初回参加者は13人にとどまった。5人衆が安倍派内ににらみを利かせ、安倍チルドレンの高市接近を阻んできたのだ。

5人衆の重しがなくなったことで、安倍チルドレンが総裁選を機に高市氏のもとへ駆け寄り、「高市派」結成に発展する可能性は十分にある。安倍派は福田派と高市派に次第に色分けされ、5人衆らベテラン勢を中心にどちらにも抵抗がある面々はさらに枝分かれしていくと私はみている。

主流派閥・茂木派の溶解

派閥存続を決めながら離脱者が続出して溶解しつつあるのは、茂木敏充幹事長が率いる第三派閥・茂木派(平成研究会)だ。

真っ先に離脱を表明したのは、次世代ホープの小渕優子選対委員長だった。父の小渕恵三元首相は平成研の元会長。「平成研」の名は、小渕氏が官房長官時代に元号「平成」を発表したことにちなんだものである。

小渕優子氏
小渕優子氏(写真=首相官邸/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

小渕内閣で官房長官を務め参院のドンとして君臨した故青木幹雄氏と、首相在任中に病に倒れた小渕氏から政権を受け継いだ森氏はともに小渕優子氏を寵愛し、麻生太郎副総裁を後ろ盾とする茂木氏を毛嫌いしてきた。今回の派閥解散ドミノを機に青木氏の長男である青木一彦氏ら参院茂木派の主力が相次いで離脱したのは、これを機に茂木氏に反旗を翻して小渕氏を軸に「小渕派」を再興する布石とみられている。

茂木氏は麻生氏の後押しを受けてポスト岸田に名乗りをあげるつもりだったが、派閥の足元が大きくぐらつき、総裁選出馬自体が危うくなってきた。