株式時価総額は菓子業界トップクラス

寿スピリッツは、長崎の「九十九島せんぺい」の九十九島グループや「ザ・メープルマニア」のシュクレイ、米子の寿製菓など、海外も入れて17の子会社がグループを形作る。

新型コロナ感染拡大時の2021年3月期には29億円の営業赤字に陥ったが、2023年3月期の売上高は501億5500万円(前々期比は約1.5倍)に回復し、営業利益も99億円を計上。売上高、営業利益ともに過去最高を記録した。プレミアムギフトスイーツ業界では最大手だ。

寿スピリッツは東証プライムに上場しており、株式時価総額は3105億円だ(2024年1月31日時点)。売り上げランキングは菓子業界12位だが、時価総額ではカルビー(4155億円)に次ぎ、江崎グリコ(2958億円)や森永製菓(2651億円)を上回っている。

会社存続の危機を救った「社員のアイデア」

コロナ禍は寿スピリッツにも深刻な影を落とした。人流が国内から消え、観光客も消滅。ビジネスマンの出張もなくなった。当然、お土産を買う人も激減する。一時は売り上げが9割減という事態に追い込まれ、会社存続も危ぶまれた。

しかし河越さんは、ポジティブに「ツイている」と声に出し続けた。「手持ちの現金がまだあり、1年くらいの苦境は乗り越えられるはず」と、なんとか堪える道を探った。

河越社長が身に着けている同社オリジナルの腕時計。「ツイてますか ツイてま~す」と書かれている
撮影=プレジデントオンライン編集部
河越社長が身に着けている同社オリジナルの腕時計。「ツイてますか ツイてま~す」と書かれている

すると、社員からさまざまなアイデアが上がってきたという。生産ラインの見直し、商品のリニューアル、緊急事態を逆手に取って普段ならできない原料などの仕入先メーカーとのすり合わせ、製造プロセスの大胆な改革……。そうしたスリム化の結果、河越さんが言うところの「超現場力を駆使し、強靭きょうじんな会社体質を手に入れた」という。

この改革を提案してきたのが現場の社員らだったという点も見逃せない。これがもしも、上からの高圧的な命令だったとしたら上手くいかなかったことだろう。経営陣がボトムアップで社員の声や改革を積極的に採用していったことが、全社一丸の改革を成功させた。