約2000棟のマンションが大規模修繕の実施なし

一般に分譲マンションでは各部屋の所有者全員で組織する管理組合があり、建物の管理運営を行う。所有者は管理費と修繕積立金を毎月支払わねばならず、前者は共用部分の光熱費やちょっとした不具合の修理費、組合の運営費などに使われ、後者は大規模修繕工事、つまり建物の躯体の補強や給排水管の補修、外壁の塗り直しなど、文字通り日頃はできない大掛かりな修繕に備えて積み立てていく。

国交省のガイドラインなどでは大規模修繕は12〜15年に一度の周期で行うことが理想とされる。にもかかわらず、東京都のマンションのうち2000棟近くが40年間で一度も実施したことがないのだ。

都ではこうしたマンションを「管理不全の兆候あり」としている。管理状況の届け出を行っていないマンションも1500棟近くあることを考慮すると、管理不全マンションはさらに多い可能性が高い。

もう7~8年は動いていないエレベーター

管理不全が進むマンションではどんなことが起きるのか。東海地方にある築38年のマンションを訪ねた。

大勢の利用客で賑わう最寄り駅から10分も歩かないうちに建物が見えてくる。5階建てのどっしりとした外観はごくありふれたマンションのようだが、近づくと徐々に状態の悪さが伝わってきた。外階段には雨だれの跡が濃く残り、日当たりが良いはずなのにエントランスはどこか薄暗い。敷地内にはお菓子の袋のごみが捨てられている。

「これはクラックですね。コンクリートは長年経つとひび割れが出てくる」

マンション管理士の木村幹雄さんがそう言って指差す先には、大きな裂け目があった。マンションの工法として多用される鉄筋コンクリートはメンテナンスが行き届かないと中の鉄骨がさびて膨張し、覆っているコンクリートを押し出して破裂させる。そうしてひび割れた箇所から雨水が侵入し、ますますさびが進む悪循環に陥ってしまう。このマンションでは外壁のあちこちにひびが入り、住人が行き来する階段の天井部分も大きく割れていた。

「鉄筋がむき出しになっていますね。頭なんかに落ちますと怪我をすることもあって非常に危ないです」

床を這うひびに沿って水分が染み込んだ共用廊下を進むと、木村さんが「見てもらいたい」というエレベーターがあった。灰色の機体は全体にさびが浮いて汚れ、床と接する部分は欠けている。破片が辺りに散乱していた。

「エレベーターは年に一度、必ず法定点検をして整備しないといけないんですが、やっていなかった。非常に危険な状態だということで止めています。もう7〜8年は動いていないですね」